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北朝鮮

中国に港を開放した将軍様の裏事情

2010年9月1日(水)16時02分
アイザック・ストーンフィッシュ(北京支局)

 親愛なる指導者の健康状態は見た目どおり思わしくないし、食糧不足も相変わらずの悩みの種。それでも北朝鮮の国民には頼れるものが1つある。中国だ。

 中国の通関統計によれば、北朝鮮と中国の貿易は今年前半で16%以上拡大している。またこの1年で、中国企業は北朝鮮の清津港と羅津港の使用権を獲得した。

 羅津港を経由することで、中国は日本海へ直接出て行けるようになる。これは19世紀以来初めてのことで、中国東北地方の企業は日本や中国南部、ロシアへの理想的な経路を確保することができる。

 北朝鮮が中国企業に門戸を開いているのには理由がある。病気で弱っている金正日(キム・ジョンイル)総書記は後継者への権限委譲に向けて準備を進めていると思われるが、後継者と目されるのが三男のジョンウンだ。金は8月26日から中国を電撃訪問したが、既に今年2回目という異例の訪中にはジョンウンも同行したと報じられている。

 金の死去後に予想される権力上層部の大混乱という危機に備えているであろう北朝鮮にとって、体制の安定こそが最重要課題だ。そんな北朝鮮にとって、今のところ中国は最も信頼できる友人。北朝鮮と中国の双方とも、その関係を台無しにするようなまねはしないだろう。

[2010年9月 8日号掲載]

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