最新記事

イスラエル

情報機関モサドと外務省のバトルが勃発

2010年8月27日(金)13時49分
マット・ベイノン・リース

 イスラエルの情報機関モサドといえば、世界中で秘密工作を展開する無敵のスパイ集団。そんな彼らに強敵が現れた。同国外務省の労働組合だ。

 外務省職員は今、世界中のイスラエル大使館を拠点とするモサド工作員の活動資金をすべて凍結している。モサドが「スト破り」をしたというのがその理由だ。

 事の発端は8月16日から予定されていたネタニヤフ首相のギリシャ訪問。賃上げ交渉のストライキを続けていた外務省労組は、この外遊が交渉材料になると考えていた。しかしモサドは首相のギリシャ訪問を手助けし、通常は外務省がやるべき仕事も引き受けた。これが「スト破り」と見なされた。

 このため、モサドは外交郵便で機密文書を送れなくなった。各大使館は工作員の子供たちの教育費の支払いを止める予定で、工作員の給料自体が出なくなるかもしれない。工作員は外交パスポートを発給してもらえなくなる。「既にモサドの活動には支障が出ているはずだ」と、メディアを分析するシンクタンクの共同創設者アーロン・ラーナーは言う。

 外務省労組も、賃上げに反対する財務省もすぐには譲歩しそうにない。ラーナーによると、「彼らはモサドなど気に掛けない」。

[2010年9月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

エヌビディア「H20」は安全保障上の懸念=中国国営

ワールド

中国、米にAI向け半導体規制の緩和要求 貿易合意の

ワールド

北朝鮮、軍事境界線付近の拡声器撤去を開始=韓国軍

ワールド

米、金地金への関税明確化へ 近く大統領令=当局者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 5
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中