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イスラエル

ネタニヤフが陥る「ブッシュ病」

2010年7月5日(月)12時57分
デービッド・グラハム

 イスラエルのネタニヤフ首相の政策は、00年代半ばの米ブッシュ政権の政策にそっくりだ。微妙な局面で武力を行使し、国際世論に耳を貸さず、有権者の不満には知らん顔。このままでは国際社会でのイスラエルの評判が地に落ち、ネタニヤフも与党リクードも大きな痛手を負いかねない。

 アメリカの国際的なイメージダウンは9・11テロ後に始まった。アフガニスタンのタリバン政権を崩壊に追い込んだ功績より、「敵性戦闘員」を拘束したり、イラク戦争の泥沼化を引き起こしたりしたことなどが批判された。

 ネタニヤフも同じ道をたどっているようだ。バイデン米副大統領がイスラエルを訪問中の3月には、東エルサレムでのユダヤ人住宅建設を発表。5月末にはパレスチナ自治区ガザに向かう支援船団をイスラエル軍が強襲し、多数の死傷者を出した。

 国内のハト派や国際社会は、ネタニヤフはパレスチナとの「2国家共存」を目指すべきだと考えている。だがヨルダン川西岸の入植凍結など穏健な措置にさえ、多くの国民が反対しているのが現状だ。

 左傾化し過ぎればタカ派の支持を失い、右傾化を強めれば国際世論の非難を浴びる。難しい立場に置かれているのは確かだが。

[2010年7月 7日号掲載]

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