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毒ギョーザ

「事件解決」でも日本には複雑な代償

2010年4月9日(金)14時13分
長岡義博(本紙記者)

 08年1月に日本で起きた中国製冷凍ギョーザ中毒事件の容疑者拘束が3月末、突然発表された。日中間に刺さったトゲが抜けたことで、鳩山政権は「中国側の努力を評価する」と好意的なコメントを出した。しかし、中国はただで自国民の「クビ」を差し出したのか。

 仏フィガロ紙は今年1月、「中国政府が鳩山の南京訪問と胡錦濤国家主席の広島訪問を提案した」と報じた(両国政府とも否定)。だが中国政府の本当の狙いは日中関係の改善というより、もっと複雑なものかもしれない。

 中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は1月、自由貿易協定(FTA)を発効させた。韓国もASEANとFTAを締結しており、日本を含んだアジア地域の広域FTAが完成すれば、中国はこれまで依存していたアメリカに代わる市場を確保できる。

 「中国の狙いはASEANプラス日中韓の実現。アメリカに対抗する上で、距離が近い日本は潜在的に最良のパートナーだ」と、中国人政治学者の趙宏偉は言う。「この枠組みが将来、安全保障に発展するかもしれない」

 日本が中国シフトを強めれば、日米関係の重要性は相対的に低下することになる。中国政府にとっては願ってもないことだろう。

[2010年4月14日号掲載]

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