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自由貿易協定

台湾人が中国とのFTAを嫌がる理由

2010年4月19日(月)16時03分
ジョナサン・アダムズ

 経済成長が続く大陸と友好関係を築いて台湾を発展させると約束した国民党政府は、中国政府と自由貿易協定(FTA)に当たる経済協力枠組み協定(ECFA)の締結を目指して協議を続けている。成功すれば2年後に再選を狙う馬英九総統にとってまたとないアピールになるはずだが、国民にはあまり理解が広がっていない。

 そこで政府はテレビやウェブサイトで広報キャンペーンに乗り出した。最近は、投資家を象徴する「福の神」の姿をした外国人が家の戸をたたいて回り、家の中で若い男性が「このままでは北朝鮮のように経済的に孤立する」と家長を説得するビデオが流されている。

 台湾政府の調査では、協定によって外国投資が90億ドル増え、GDP(国内総生産)を押し上げる効果がある。しかし政府の広報ビデオには効果がなかったらしく、最近の世論調査では、協定を支持する人は35%と半年前より11ポイント減った(反対は32%)。

 原因は2つ。1つは協定に関する議論が専門的で難解なこと。もう1つは依然として根強い中国への不信感。友好的なジェスチャーの一方で、中国政府は今なお数百基のミサイルを台湾に向けている。

 台湾人が協定についてあまり考えたくないのも無理はない。

[2010年4月21日号掲載]

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