最新記事

北朝鮮

春休み旅行は平壌で決まり!

北朝鮮が今年アメリカ人観光客の受け入れを増やすのは、金正日政権が揺らいでいる証拠かもしれない

2010年1月18日(月)16時42分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

ドル箱 マスゲームは北朝鮮観光のハイライト(写真は08年9月の建国60周年の記念式典) KCNA-Reuters

 春休みの楽しい旅行先をお探しのお母さん、お父さん、子供たち! おなじみの観光地では物足りない? それならいいところがある。平壌だ


 北朝鮮は今年、仇敵アメリカからの観光客の受け入れを増やす見込みだ。制裁による痛みが増すなか、新たな外貨の獲得を図ろうとしている。

 現在のところ北朝鮮がアメリカからの団体旅行客を受け入れているのは、政治体制宣伝用のマスゲーム「アリラン祭」のときだけ。今年は8月から開催される予定だ。

 しかし、北京にある高麗(コリョ)ツアーズのサイモン・コッカレルによると、北朝鮮政府はアリラン祭以外の時期も通年で観光客を受け入れる予定だという。北朝鮮を訪れるアメリカ人観光客の8割を扱う高麗ツアーズは、この決定を北朝鮮の提携先から知らされた。高麗ツアーズは昨年、280人のアメリカ人観光客を北朝鮮に送り出している。


 別の見方をすれば、この決定は北朝鮮の政権が以前ほどは安定していないことを示す兆候の1つと思われる。


 北朝鮮の米ドル収入をさらに減らす事件が発生した。タイ当局は先月、貨物機で北朝鮮から密輸入された大量の武器を押収した。外交筋はこの事件が金正日総書記の資金獲得に深刻なダメージを与えると見ている。

 また、脱北者たちの証言によれば、昨年11月に実施されたデノミネーション(通貨単位の切り下げ)が厳しい冬の時期にさらに経済的混乱を引き起こしているという。

 金総書記は今月9日、国民の生活水準を向上させる必要があると認める極めて稀な発言をした。「白米と肉の入った汁」を人民に食べさせる目標を達成できていないと自ら認めたのだ。


 実際、ここ2カ月の間に北朝鮮ではデノミをめぐる抗議行動が起きており、金総書記は国民を飢えに苦しませていることを公式に認めている。

 北朝鮮らしくもない。今後の展開から目が離せなくなりそうだ。

Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 14/01/2010.
©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、予想外の3.2万人減 23年以来

ワールド

ハマス、米調停案の検討3日目に 赤十字がガザでの活

ワールド

EU首脳「ドローンの壁」協議、ロシアの領空侵犯に対

ビジネス

9月米ISM製造業景気指数は49.1、7カ月連続で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 3
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引き締まった二の腕を手に入れる方法
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かっ…
  • 8
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 9
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 10
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 7
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 8
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中