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EU加盟よりメディア弾圧のトルコ

2009年10月20日(火)11時51分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)

 トルコは本気でEUに加盟したいのか。それとも自国に都合のいい改革だけ行うつもりなのか。

 トルコ政府は目下、政府批判を繰り返してきた同国最大のメディアグループ、ドアン・グループをつぶそうと躍起だ。その様子をヨーロッパ諸国が不安そうに見守っている。エルドアン首相は政府に批判的なメディアを倒すためにEUが掲げる報道の自由を無視しているのではないか、と。

 これまでドアンに何かと横やりを入れてきた政府の圧力は9月、脱税の疑いでドアンに25億ドルの罰金を科したときに頂点に達した。グループを破産させかねない額だ。

 エルドアンは、ドアンとの対立と罰金は関係ないと主張している。しかしEUからみれば、間違いなく言論の自由への侵害だ。今月に出されるEUの年次中間報告には、トルコへの激しい非難が言及されるだろう。

 イスタンブール駐在のEU上級外交官は、ドアンの一件で「(エルドアンが)真剣にトルコをヨーロッパの国にしたいのか分からなくなった」と語る。フランスやドイツがトルコ政府にEU加盟の条件を満たすよう強く要求している今、ドアンの問題は最悪のタイミングで表面化した。

 エルドアンがEU加盟より国内のメディア弾圧のほうが重要であるかのような印象を与えれば、トルコはヨーロッパを必要としないのだと受け取られる。ヨーロッパには、そう考えたい人が星の数ほどいる。

[2009年10月21日号掲載]

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