最新記事

生殖医療

精子バンクより、規制のないSNSやアプリでの「精子提供」を選ぶ女性たち...変質者やトラブルの危険も

THE SEARCH FOR SPERM

2024年05月11日(土)12時33分
バレリー・バウマン(本誌調査報道担当)

newsweekjp_20240510040132.jpg

バウマンは写真のような精子バンクの冷凍精子ではなく、新鮮な精子の提供を受けた EVAN HURDーCORBIS/GETTY IMAGES

私は落ち着かない気分のまま、考えごとがあるときのルーティンどおりにワシントンの街をあてどなく歩いてみた。2時間近く歩いた後、ふと立ち止まり、携帯電話を取り出してグーグルで検索した。「あなたの知っている精子ドナー」

それから数分──対面で会えるドナーを見つけることは可能だと理解するのに十分な時間だった。私は携帯電話をしまい、急いで帰宅した。

面白いものが次々と私の前に現れた。例えば精子ドナーを検索できるウェブサイト「ノウン・ドナー・レジストリ(KDR)」。フェイスブックには専門のコミュニティーがいくつもあり、ドナーが無料でプロフィールを公開していた。スマホの画面をスワイプするだけでドナー候補を絞れるマッチングアプリ「ジャスト・ア・ベビー」も見つかった。

リンク先に目を通すうちに温かい気持ちになり、笑いが込み上げた。これならドナーはきっと見つかる。クレイジーな話だが、私は決意を固めた。精子バンクでドナーを選ぶ際に妨げになった不安も、解消できそうだった。将来子供に父親の素性や彼が私に協力した理由を聞かれたら、きちんとした答えを返したかった。

オンラインでドナーを探せば相手の人柄が分かるし、子供が18歳になるのを待たずに会わせられるかもしれない。子供に自信を持って紹介できる人を選ぶことができるのだ。

一部のドナーは自分の精子で子供を儲けた人々の非公開グループをフェイスブック上でつくり、異母きょうだいが互いに交流し、家族のようなつながりを感じられるようにしていた。独りで子供を育てるつもりの私は、こうした計らいに強く心を引かれた。家族が多ければ多いほど、子供は愛情と環境に恵まれる。

拍車をかけたのはコロナ禍

ジャスト・ア・ベビーを使い始めて2日後、私はあるドナーの写真を見てつぶやいた。詐欺だ詐欺。成り済ましに決まってる──。

その男性はあごがクラーク・ケントみたいにがっしりとして、頰骨が高く、茶色い髪が波打っていた。まさに現実離れしたイケメンだった。しかも職業はニューヨーク市の消防士だというのだから、セクシー度もヒーロー度も爆上がりだ。

彼は賢く(経営学の学位あり)、芸術的で、彫刻が趣味だった。何より純粋に人助けがしたいようだった。人工授精しか行わず、子供を10人以上つくるつもりもなかった。どちらも私には重要なポイントだった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、米に懸念表明へ 半導体装置の特例措置撤回観測

ワールド

米がイラン核施設攻撃、和平迫るトランプ氏 イスラエ

ワールド

米がイラン核施設攻撃、和平迫るトランプ氏 イスラエ

ワールド

フーシ派、米のイラン攻撃への対応「時間の問題」
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    シャーロット王女が放つ「ただならぬオーラ」にルイ…

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    大叔母「麗人・アン王女」を彷彿とさせる、シャーロッ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:コメ高騰の真犯人

特集:コメ高騰の真犯人

2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る