最新記事

海外ドラマ

私たちは全員「キャリー・ブラッドショー」だった...人気の秘密は『SATC』でいちばん「普通」だったこと

We Are All Like Carrie

2023年07月13日(木)14時50分
ルーク・ウィンキー

230718p56_SATC_01.jpg

(写真左から)純情派のシャーロット、快楽至上主義のサマンサ、独立心が旺盛なミランダ PHOTOFEST/AFLO

中心人物はリアルが肝心

弁護士のミランダは独善的で、友達の幸せを素直に喜べない皮肉屋。僕は生まれてこの方ミランダみたいな人間には会ったことがないし、身近な人に「ミランダ型」だと言われたらきっと落ち込む。

実業家のサマンサは、いわば好色な酒神ディオニソスの化身。でも悲しいかな、あそこまで人生を謳歌できる人間は存在しない。

シャーロットは超やり手のアートディーラーなのに、30代後半とは思えないほど初心(うぶ)。恋愛では記憶喪失を疑いたくなるくらい、過去の失敗を繰り返す。

分かりやすい不満や欲求をバランスよく抱えているのは、キャリーだけだ。結婚したいがコラムニストの仕事は犠牲にしたくない。独身生活を満喫しつつ、家庭の幸せにも憧れる。セックスは好きだが、面倒な交際は嫌い......。

誰かに似ていないだろうか。そう、あなたが知っている人のほぼ全員が、キャリーに似ているはずだ。

ほかのキャラクターを特徴づける弱点を、キャリーは全て持っている。ミランダの厭世も、サマンサの自己陶酔も、理性に耳を貸さないシャーロットの恋愛下手も全部。

だが型にはまった行動規範に縛られないところが、3人とは違う。キャリーは多面的で、時には自分の貪欲な本能に逆らったりもする。
ほかの3人にはこの主体性がない。例えばサマンサは戯画的に誇張された性欲に踊らされてばかりで、そんな人物に共感するのは難しい。

これはつまり、キャリーが中心人物だからだろう。中心人物というのは、あまり現実離れしていてはいけない。

僕らはミランダやシャーロットに最悪にダメな自分を、サマンサに最高にイケてる自分を重ねるかもしれない。だが重力の法則により、いつも必ずキャリーとそのナレーションに引き戻される。

自信を失い、くよくよすることもあるが、キャリーは極端にポジティブでも極端にネガティブでもなく、めったに正気を失わない。そこがリアルで人間らしい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中ロ首脳、中東情勢巡り近く電話会談へ=ロシア大統領

ビジネス

米輸入物価、5月は前月比横ばい エネルギー製品の低

ワールド

支援物資待つガザ住民59人死亡、イスラエル軍戦車が

ビジネス

米5月小売売上高‐0.9%、4カ月ぶりの大幅減 自
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    ホルモンを整える「ヘルシーな食べ物」とは?...専門…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:コメ高騰の真犯人

特集:コメ高騰の真犯人

2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る