最新記事

名誉殺人

「なぜ、名誉の名のもとに女性が殺されるのでしょうか?」 子の移住望んだ豪人女性、パキスタンで義父に斧で殺される

2022年06月24日(金)17時33分
田中ゆう

殺されたタスニームさん、前向きで美しい心の持ち主だったという Photo via Facebook

<タスニームさんは死の1年前に、名誉殺人を非難する投稿をしていた。オーストラリアで子供に良い教育を与えたいという彼女の願いは義父の暴力によって打ち砕かれた>

またもパキスタンで名誉殺人の犠牲者が出た。被害者はオーストラリア人でパキスタンに住む30代のサジダ・タスニームさん。3人の子を育てる母親だ。

子供の目の前で繰り広げられた惨劇

以前はオーストラリアのパースに住んでいたが、夫のアユブ・アフマドにパキスタンへ移り夫の両親と同居するよう強要されたという。(BBCウルドゥー放送)

タスニームさんは子供の教育方針をめぐり義父ムフタル・アフメドと揉めていたとされる。パキスタンにいるよりも、オーストラリアへ戻りより良い環境で質のいい教育を受けさせることを希望していた。

これにパキスタン人の義父は猛反対。孫が非ムスリムの国にいれば、自分たちのアイデンティティと宗教を失ってしまうから「異教徒の土地に孫を置くことはできない」と言った。子供たちの目の前であることもかまわず、口論を繰り広げた末に手が出た。

義父は、タスニームさんが子供を連れてパースに移住する計画を知り、パスポートを没収したのちに、斧で襲いかかったとされている。6月11日にパキスタン北部のサルゴダ市近郊の住宅で発見されたタスニームさんは猿ぐつわをはめられた状態で息絶えていた。

ガーディアン紙によると、その日の午後2時前にこの家を訪れた、タスニームさんの父親が、娘が義父によって斧で頭を殴られているのを見たと警察に話した。父親は「身の危険を感じ、動けなかった」そうだ。また、タスニームさんは毎日のように「オーストラリアを忘れろ」と言われ、義父から日常的に暴力を受けていたと言う。

タスニームさんの夫は事件当時、バーレーンでエンジニアとして働いていたため不在だったと伝えられている。

パンジャブ州警察は、タスニームさん殺害の容疑で義父ムフタル・アフメドを逮捕、起訴した。

自分のような苦しい思いをさせたくない

我が子のためを思ったが故の行動で殺されてしまったタスニームさん。子供は、息子と2人と娘が1人、末っ子はまだ3歳だ。

タスニームさんの友人のナジア・メシアさんは「この胸の痛みをどう処理したらいいかわからない」と言った。「彼女はいつも私を助けてくれた。前向きで美しい心の持ち主でした」

australian-woman-father-law220624nww01.jpg

Photo via Facebook

「タスニームさんは自分の子供たちにオーストラリアで高等教育を受けさせ、自分と同じような目にあって欲しくない」と望んでいたという。パキスタンでの生活は困窮していたそうだ。

子どもたちは現在、パキスタンのタスニームさん側の家族の元にいる。

子供たちは、祖父が母を殺す悲劇に直面し、動揺している様子で、母親のいない新しい生活に適応していない。事件がトラウマになっているそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラの自動運転機能巡る集団訴訟が審理へ、米連邦地

ワールド

原油先物は続伸、米インフレ鈍化と堅調な燃料需要受け

ビジネス

GDP1─3月期は年率2.0%減、内需に弱さ 特殊

ワールド

オランダ、極右含めた連立政権樹立で合意 下院選から
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    104歳にして狩猟免許を初取得したスーパーおばあちゃ…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 2

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり