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英会話で「本当に英語が身につく」は不可能。だが昔の日本には優れた外国語学習法があった

2022年05月31日(火)16時35分
船津徹

明治維新後に新政府は西洋の文化や技術を学ぶためにアメリカやヨーロッパから外国人を招き、若者の教育に当たらせました。お雇い外国人の一人であるアメリカ人のジョン・イングは、旧弘前藩校である東奥義塾の英語教師に着任しました。

その当時の日本には英語の教科書などありませんでしたから、彼はアメリカの高校で使用されているテキストを用い、アメリカの学校カリキュラムをそっくりそのまま東奥義塾に取り入れました。

英語の名文や演説の素読・暗唱、そしてディベートで弁論術を鍛えるというアメリカ式の教育を実践した結果、生徒の英語力は飛躍的に向上しました。ジョン・イングは成績優秀な学生をアメリカの大学へ留学させることを思い立ち、実際に数名を渡米させました。

驚くことに、入学試験を受けた学生たちは、高い英語力が認められ、直接大学への入学が許可されたのです。その当時、日本で英語教育を受けた学生が、現地での語学訓練を経ずに、直接アメリカの大学に入学できることは極めて稀だったのです。さらに彼らは大学でも優秀な成績を収め、数々の優秀賞を受賞して帰国したそうです。

英語話者が少なく、まともな辞書や英語のテキストがなかった時代ですから、「ひたすら英語を読む」という学習法をとらざるを得なかったという事情はあるでしょう。しかしジョン・イングが実践した「インプットに徹する学習」が、高度なアウトプット(会話力やライティング力)につながるという史実は、現代の「英会話に偏りがちな英語教育」を見直す上で大いに参考になります。

「英会話は英語学習のゴール」そう考えると、今、子どもにどんな英語教育を与えるべきなのか、その答えが見えてくるはずです。


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profile_Pic_toru_funatsu.jpg[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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