最新記事

冒険

北極圏で超ハードな「隔離生活」を送る女性2人(と1匹)のクレイジーなジャーニー

ARCTIC WONDER WOMEN

2021年04月17日(土)11時54分
キャスリーン・レリハン(トラベルライター)

「女性のほうが向いている」

2度の冬を耐え抜いたストロームとソルビーは、男でなくても極限の環境でミッションを完遂できることを証明した。もちろん肉体的にはきついけれど、女性のほうが有利な面もあるとストロームは言う。

「互いに弱みを見せ合えるという点では女性のほうが適している」と彼女は言った。「どんな状況でも、女性は男性よりも嫉妬心や競争心を制御しやすいと思う。私たちはハートの使い方がうまいから」

ハートが強いからこそ、彼女たちは1年以上もシャワーなしの生活に耐えられた。狭いワンルームを寝室にもダイニングにもオフィスにも、運動場にもキッチンにも洗濯室にも実験室にも使い回すことに平気で対応できた。

そして太陽光と風力だけを頼りに電力を生み出し、大気中の二酸化炭素を回収する試みにも取り組んできた。今年5月で極地滞在は合計19カ月に上るが、彼女たちの暮らしは環境に負担をかけないどころか、むしろ負荷を減らしている。

この活動は自分のためではなく、みんなのためのものだとソルビーは言い、こう続けた。「この世界には、みんなのために頑張っている女性リーダーがたくさんいる。私たちもその仲間。知識やリソース、ネットワークがある女性たちは、みんなの橋渡しをする役割を担わなければならない。だから私たちもみんなに、自分自身をリードし、自分たちの人生だけでなく、みんなのために責任を果たすよう促している」

ストロームも「これは私たちだけではなく、子供たちのためだ」と言う。「いま私たちが何もしなければ、子供たちに明日はない。変化を起こそうという思いは誰の心にもあるはず。私たちは、その思いに火を付けたい。絶望なんてやめて、現実を見つめ、行動を起こす。それが本当に、本当に大切なの」

そのとおり。1年半にわたる極地隔離生活に耐えてきた彼女たちが望むのは、みんなが気候変動の影響にに気付き、行動を起こすことだ。今すぐに。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 3

    話す力を鍛えるアメリカの学校教育

  • 4

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 5

    3人の親の遺伝子を持つ子供は既にいる 「デザイナー…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    女子サッカーで世界初、生理周期に合わせてトレーニ…

  • 4

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 3

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 4

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 5

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:教養としてのBL入門

特集:教養としてのBL入門

2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく