最新記事

女性問題

コロナ禍の新しい生活様式は家事の男女平等を進める?

2020年12月09日(水)20時45分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

スイスの洗剤メーカーの調査では月に最低1回は掃除のことで喧嘩になると答えた人は45%もいた Tijana87 - iStockphoto

<ロックダウンや在宅勤務で家族全員が家にいる生活は、家庭の役割分担にも変化をもたらしつつある>

コロナ禍の女性の家事負担

私事だが、筆者はジャーナリスト・ライターとして活動しながら家事もほぼすべてこなしている。仕事が立て込むときには手抜きをしつつ切り抜けているものの、10月のある日、夫と高校生の息子に対して「少しは家事を手伝ってほしい」と強い怒りをぶつけた。かなり厳しい口調で主張したため2人とも驚いていたが、これにはコロナ禍が関係している。

この春から夫は在宅勤務中心になり、筆者はランチ作りの負担が増えた。ランチと夕食の献立を毎日考えるのもたいへんだ。コロナ禍の影響で掃除の時間も増えた。春のロックダウン中は息子も休校だったし、夫が在宅だと家の汚れは増えることはあっても減ることはない。

家族全員が快適に過ごせるようにしなくてはという気持ちと、記事執筆に集中したいという気持ちの板挟みで、穏やかに過ごしていたつもりが実はずっと緊張感を抑えていたのだと思う。そのストレスが爆発したのだろう。

筆者の友人の精神負担は、もっと深刻だ。自分はパート勤務しつつ、古風な夫がやはり春から在宅勤務になり、彼を支えようと朝から晩まで家事を頑張り過ぎた。交友関係が広い彼女は感染拡大で友だちに会うことを控え、週末は夫と散歩に出かけるのが習慣になり、自分の自由時間が激減した。パート先でも同僚たちとの間で問題が起きた。とうとう、医師に精神クリニックでの療養を勧められるまでに至ってしまった。「夫に家事を手伝ってもらいたかったけれど、言えなかった」と彼女は筆者に打ち明けた。

最低月1回は「掃除」でけんか

OECDの各国比較調査 Gender - OECD によると、日常の家事(*)を含めた家庭での無給の仕事に費やされる時間は、どの国でも女性のほうが男性より長い(*買い物、子どもや親の世話、ボランティア、家事に関連する移動時間なども含む)。

男性はどんな家事をしているのか。一例を挙げると2019年、米ギャラップ社による世論調査 Women Still Handle Main Household Tasks in U.S. (gallup.com) の結果は次のとおりだった(アメリカ全土、18歳以上のパートナー関係にある人たち3,062人回答)。

車のメンテナンスや庭仕事、支払い関係に比べ、洗濯、掃除、料理、食料の買い出しなど男性のほうが率先してやっている家事は少ない。

筆者としては、夫に月に数回は食料の買い出しと食事の用意をしてほしい。ときどき掃除機をかけてもらえたら理想的だ。料理は性別というより、経験の違いが大きい気がする。掃除はどうか。女性の方が隅々まで目が届きやすいことはあるかもしれないが、掃除は性別に関係なくできるものだから、もう少し男女平等になるべきだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:高市氏、経済対策で日銀に「注文」へ

ビジネス

米テスラ、サイバートラック責任者が退社へ

ビジネス

資生堂、米州事業は26年に黒字化見通し 構造改革と

ビジネス

日経平均は反発、米政府閉鎖解除への期待で AI関連
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「見せたら駄目」──なぜ女性の「バストトップ」を社…

  • 5

    カーダシアンの顔になるため整形代60万ドル...後悔し…

  • 1

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 4

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    「エプスタインに襲われた過去」と向き合って声を上…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 4

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:高市早苗研究

特集:高市早苗研究

2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える