最新記事

犯罪

スカート内盗撮おとがめ無しのドイツ やっと違法化の動き

2019年09月19日(木)17時30分
モーゲンスタン陽子

ドイツの弁護士クリスチャン・ソルメケによると、2013年、女性100人以上のプライベートな部分の動画や写真を所持していたバイエルン州の小さな街の市長が軽犯罪で有罪となり750ユーロの罰金を課されたが、これは、誰かが誰かのスカート内を盗撮しているところを目撃した「第三者」が不穏な思いをすること、つまり、一般人への嫌がらせに対する罪であり、被害女性に対する罪を償わせるものではなかったという。

オンライン請願書は9月16日現在9万人以上の署名を集めている。ドイツでは請願権は基本的人権として定められており、連邦議会の請願委員会が原則すべてに対処しなければならない。請願書がネットで公開されて4週間以内に5万人以上の署名を集めた場合、委員会との公の話し合いが設けられることになっている。請願書は多くの法曹の注目を集め、今月12日にはクリスティネ・ランブレヒト法務大臣がこの「屈辱的で品位を貶める行為」に対する処罰法案の導入を発表、また連邦法務省のほか、バイエルン州など3州が、早くも今月中の法案提出を検討している。

2人の始めた努力がまもなく実を結びそうだ。

被害者自己責任論、また移民への責任転嫁も

オンライン請願書には非難の声もあったが、被害にあった少女・女性たちからの支援や共感の声が支えになっているとザイデルは言う。女性たちの多くは被害にあった際、「スカートをはかなければいい」「ズボンをはけ」などの心無い忠告を受けたというが、性犯罪において、被害者の服装を云々いうヴィクティム・ブレイミング「被害者非難」は最もあってはならないことだ。ちなみに、アップスカーティングで押収された動画や画像には、スカート以外を下から撮影したものも含まれている。

また、ドイチェ・ウェレによると、この請願書はドイツ極右政党AfDの注目をも集め、「これらの犯罪は移民によるもので、ヨーロッパ人によるものではない」と、外国人攻撃の口実にもされた。だが、ザイデルとザッセンベルクはこれを「そのような仮説にはまったく同意しない」と退けている。AfDの主張を裏付ける公式データはなく、また二人の元に寄せられる女性からの被害の声にも、特定の民族グループを示唆するものはないという。「断っておきますが、私を盗撮した男性は両方ともドイツ人でした。最初は元教師。二人目は自らの極右思想を隠そうともしていませんでした」と、ザイデルは指摘する。

筆者のスマートフォンはドイツで購入したが、日本の方々に写真・動画撮影時の消音機能を驚かれることが多い。こちらとしては消音できないことのほうにむしろ驚きを感じていたのだが、もしかすると効果的な対策なのかもしれない。

ヨーロッパでもスマホから消音機能が消える日が来るかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 4

    日本人の自己肯定感は本当に低いのか?

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が尊敬する日本の小説36

特集:世界が尊敬する日本の小説36

2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは