最新記事

ファッション

モードで宇宙を目指したデザイナーに今再びの注目 ピエール・カルダン70年の軌跡

2019年08月14日(水)19時05分
ポーラ・フローリック

66年にビニールやメタリック素材が印象的な「宇宙服ルック」で金字塔を打ち立ててからも、未来やテクノロジーにインスピレーションを求める姿勢は変わらなかった。68年には、型崩れせず立体加工ができる新素材カルディーヌを発表している。

71年にNASAを訪問。アポロ11号の乗組員が着た宇宙服を民間人で身に着けたのは、このときのカルダンだけだ。

190814NW_PCD_02.jpg

NASAで宇宙服を着たカルダン COURTESY OF ARCHIVES PIERRE CARDIN. ©ARCHIVES PIERRE CARDIN

プレタポルテの先駆者でもあり、58年にパリの百貨店プランタンで既製服を売り出した。後に発表したユニセックスなスタイルは、多くのブランドにコピーされた。

60年代後半からは「ピエール・カルダン」の商標で稼ぐライセンス事業を展開した。これで資金を確保できたから、彼は自分の会社を売らずに済んだ。

ヨコボスキーによれば、今回の回顧展での注目は「ジャクリーン・ケネディのために作った赤いスーツや、ユニセックスな装いを提案した60年代の実験的デザイン、『歩く彫刻』を意図した動きやすい服」などだ。思えば、いち早く電球やLEDをドレスにちりばめたのもカルダンだった。「実用的彫刻」と呼んだハンドメイドの家具シリーズも見逃せない。

「カルダンを再発見してほしい」と、ヨコボスキーは語る。「今の人たちは、彼の名を冠したライセンス商品でしか彼を知らない。でも生身のカルダンは70年にわたって、誰にもまねのできない服を作ってきた」


2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。

[2019年8月20日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「これからは女王の時代」...ヨーロッパ王室の6人の…

  • 3

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 4

    自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きても…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 3

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:ISSUES 2026

特集:ISSUES 2026

2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン