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「女性が性的虐待やレイプされないスリラー小説を書きましょう」 スタンチ賞は言論統制?

Thrillers and Violence Against Women

2019年07月25日(木)17時05分
マリッサ・マルティネリ

「フィクションの世界では、夜間に忍び寄るストーカーや暗い路地での襲撃、連続殺人など、見ず知らずの人間による恐ろしい犯罪が女性を襲うというのが定番の描写だが、これは危険な誤解を生む。実際には、レイプ犯の90%は被害者と面識があり、殺害される女性の半数以上は犯人のことを知っていた」

「このような誤ったイメージが定着した結果、司法の場で女性の正当な主張が認められない状況が助長されかねないのは、控えめに言っても由々しきことと言わざるを得ない。それを改める必要がある」

この主張に、多くの作家が異論を唱えた。犯罪小説家のセーラ・ヒラリーは、「これは文学賞というより、言論統制に等しい」とコメントしている。

自らもレイプ被害に遭った経験を持つ作家でジャーナリストのカイト・ウェルシュは、自分と同じような状況でレイプされた女性がヒロインの作品を書いたことがある。

「確かに気が重くなる設定だが、その点では(両親を殺された) バットマンも同じだ」と、ウェルシュはガーディアン紙への寄稿の中で記している。「それでも、親を亡くした孤児が登場しない小説だけを対象とする文学賞なんて聞いたことがない」

ウェルシュはこうも書いている。「レイプがない世界を描くことは、私にはできない。私の生きている世界には、実際にレイプがあるのだから。現実には存在しないフェミニストの理想郷を描くために、不都合な記述を取り除いたりはできない」

一方、ローレスはあるインタビューでこう反論した。「レイプ神話に詳しい専門家によれば、実際にはレイプが行われたのに世間の人がそうとは認識しないケースが多い......テレビや小説を通じて、レイプやレイプ犯に関してある種の固定観念を持っているからではないか」

「スタンチ賞は、女性に対する暴力を売りにしていない作品を評価する賞。それが気に食わない人は、どうしてそう感じるのか自分でよく考えてみるほうがいい」とも、彼女は語っている。

受賞作は昨年と同じく11月の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に発表される。女性への暴力描写の是非をめぐり、また熱い論戦が繰り広げられそうだ。


©2019 The Slate Group


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[2019年7月30日号掲載]

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