最新記事

クリスマスツリー

毎年2000万本以上も廃棄されるドイツのクリスマスツリー問題

2018年12月25日(火)18時15分
河内秀子(ドイツ在住ライター)

本当にエコ? 再利用するレンタル・ツリーが議論の的に

そもそもツリーを使い捨てにするのは環境に良くない、エコではないという考えから、生木のクリスマスツリーのレンタルを提案するスタートアップ企業が出現し、今年話題になった。

独ターゲスシュピーゲル紙は「モミの木を救え、クリスマスツリー貸します」と題した記事で、西部ドイツ、マインツにあるこの新興企業「ヴァイナハツバウムフロインデ(Weihnachtsbaumfreunde)」のサービスを紹介した。

鉢に植えたツリーをレンタルし、祝日が終わった時点で送り返すと、ツリーは再び土に植え替えられるというサービスで、ドイツ全国区に配送可能、レンタル料は1本48〜63ユーロ。返却されたクリスマスツリーは半数が、植え替えの後、生き延びることができるという。

これに批判や疑問が呈された。記事では、「室温25度の中、暖房器具のそばに置かれたり、水をきちんとやっていない状態で数日経った後で、ツリーになった木を植え替えても生き延びられる可能性は少ない」という意見を紹介している。

独ツァイト紙もこの再利用できるレンタル・ツリーを「本当にエコなの?」と批判している。

この記事ではドイツ連邦クリスマスツリー農家団体(BVWE)の会長が、「深くまっすぐに伸びた根をプラスチックの植木鉢に詰め込むこと自体が、木を苦しめている。返却された後のツリーに生き延びて欲しかったら、レンタルした人が期間中しっかりと世話をするなど、事前に十分な話し合いが必要なはずだ」と語っている。

さらにヴァイナハツバウムフロインデ社のある西部ドイツのマインツからドイツ全国への車両輸送することによるCO2排出量という問題もエコではないと指摘された。同社はその点は今後電気車を使うなどの案も考えているというが、簡単には改善できないようだ。このサービス、需要は伸びているというが課題は多いようである。

今のところ、どうしても生木というなら、やはり自分の街の近くで栽培されているツリーを購入し、回収から再利用までを徹底させるのが、環境への配慮としては最善の策なのかもしれない。昨今はオーガニック農法で栽培された木を購入する人も増えているようだ。

面白い再利用法としては、動物園で象やラクダなどの動物の餌にするという試みもあり、毎年のように、クリスマスツリーをバリバリと食べる各地の象の姿が、年始の風物詩となっている。

(ベルリンの動物園の映像より)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラ…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が尊敬する日本の小説36

特集:世界が尊敬する日本の小説36

2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは