最新記事

子供

ビーガン食しか出さない保育園 健康な体は作れるのか?

Do Vegan Kids Get Enough Nutrition?

2018年08月15日(水)12時00分
メリンダ・モイヤー

強制が裏目に出ることも

脳の成長に重要な鉄分と脂肪も、十分に摂取するのが難しい。植物性食品に含まれる鉄分は非ヘム鉄といい、肉や魚に含まれるヘム鉄よりも身体に吸収されにくい。鉄欠乏性貧血の子供は、長期にわたり知能や情緒の発達障害を負いかねないとする研究もある。

またビーガンの子供は脂肪も不足しがち。青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸も、脳の発達には重要だ。

最後にカルシウムとビタミンD(アメリカ人はカルシウムの70%以上を乳製品から取る)。幼児期にカルシウムとビタミンDが不足すると骨密度が低下し、生涯の骨折リスクが高くなる。

前出の14年の研究によれば、ビーガンは肉食に比べ、カルシウム摂取量が40%少ない。さらに緑黄色野菜などに含まれるシュウ酸は、カルシウムの吸収を妨げるから厄介だ。

そもそも特定の食品を禁じること自体にも問題がある。子供が自分の意思でビーガンになるならいいが、強制されれば子供は禁断の食べ物に憧れ、親の目を盗んで(しかも大量に)食べるかもしれない。

07年にオランダ・マーストリヒト大学の研究者がこんな実験を行った。5~6歳の子供の前に黄色い菓子が入った皿と赤い菓子の皿を置き、黄色い菓子は好きに食べていいが、赤は食べてはいけないと言い渡した。

その後、どちらも好きなだけ食べていいと言うと、赤い菓子を禁じられていた子供は赤い菓子を集中的に食べた。一方、どちらも好きに食べなさいと言われていた別の子供たちは、赤も黄色も同じくらい食べた。面白いことに、親が厳しく食事を制限している子供は、それほど厳しくない親の子供よりも菓子を多く食べた。

それも無理はない。糖質制限ダイエットの経験者なら分かるはずだ。ダイエットが終わって真っ先に手が伸びるのはドーナツ──それも1つでは済まない。

ビーガンで健康な体は作れるのか。もちろんだ。野菜と果物と全粒粉は育ち盛りの体にいいし、完全菜食は癌のリスクを減らすという研究もある。

ただし摂取カロリーや栄養バランスを、保護者はしっかり確かめる必要がある。また、押し付けは逆効果かもしれない。ダメと言われるものほど、子供は食べたがる。スカンジナビア・スクールの園児だって、こっそりチーズを食べているかも。

(c)2017 Slate

[2017年9月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン攻撃と関係筋、イスファハン上空に

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ

ワールド

北朝鮮パネルの代替措置、来月までに開始したい=米国

ビジネス

個人株主満足度、自動車はトヨタ 銀行は三井住友が首
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    ロックンロールの帝王を捨てた女性の物語、映画『プ…

  • 4

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる