障がい者のアート活動を「仕事」に変える?...三井不動産ホテルマネジメントの企画展の「本当の意義」

また、展示・販売機会の増加により、福祉施設での創作活動が「アート療法」や「レクリエーション活動」から「生産活動」、つまり「仕事」へと再定義されつつある。
作品制作を通して得た収益は、施設の受注作業や利用者の施設外での就労と同列に扱われ、施設収入となったうえで、作家に「賃金」として反映される。これまで「趣味」として扱われることの多かった創作活動が、まさに「仕事」として認められるようになるのだ。
各施設でも、利用者の創作活動の支援方法を探求し、アーティストの特性に合った関わり方を取り入れるなど、より質の高い作品を生み出しやすい環境づくりに取り組んでいる。これにより、さらなる作品販売につながる好循環が生まれている。
全国的なネットワークを活かし、地方の作家も活躍できる場に
障がいのあるアーティストの多くは、普段はホテルと接点のない福祉施設や団体に所属している。そのため、当初は作品の募集や作家の発掘が課題だったという。そこで、グループハッピースマイルに協力を依頼。同団体を介して作品を募集することで、現在では多くの福祉施設や作家、作品とのネットワークを構築できている。
さらに2023年からは、地方に住む作家の発掘や作家との関係構築にも注力している。金沢展では、金沢市でアート活動を支援する団体「金沢アート工房」の協力を得て、金沢市が発信するアーティストを多く起用した。

発表の場が増えることで、地方作家のアート作品の地域資源としての価値が高まると同時に、アーティストたちのやりがいにもつながっている。愛媛県の「終着駅」とも呼ばれる宇和島市に住む、ある作家は、自分の作品が首都圏のホテルで展示されることが大きな励みになっており、誇りに感じると語っている。
こうした取り組みを地方に広げていけるのは、全国39カ所のホテルネットワークを持つ同社だからこそと言えるだろう。

また、昨今急増する海外からの来訪者も視野に入れ、展示物を日英の2言語で表記したり、特設ページは4言語で掲載したりと販売を海外ゲストにも拡大すべくシステムの改善も進めている。
海外ゲストからも作者への温かなメッセージや購入希望が寄せられており、スタッフにとっても誇りを持って取り組める大切なイベントとなった。
「これは海外からの宿泊者に向けて『多様性を重んじる日本』を発信する挑戦でもある。文化と福祉が交差する『新たな日本のホスピタリティ』を形にしていく」と雀部氏は語る。
実際、昨年9月にはこの取り組みが認められ、観光業の発展・拡大に貢献した国内外の組織や企業の持続可能で優れた取り組みを表彰するジャパンツーリズムアワードで入賞を果たした。
今後は「障がいの有無でくくらない」「障がいの有無を大書しない」キュレーション志向を強化し、作品性が評価される環境づくりを目指すという。
障がい者アートが「共感」や「福祉」の枠を越え、作品として評価され始めた。この動きは、多様性を前提とする社会の成熟を後押しするだろう。
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