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脱炭素の可視化で一人一人の選択を変えていく...Earth hacksが作る、環境配慮が「売れる理由」になる社会

2025年11月13日(木)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

「デカボスコア」を新たな社会インフラに

この仕組みの最大の特徴は、単なる表示にとどまらず、社会実装までを一貫して設計している点にある。スコアの算定はISO規格(ISO14040/14044)に沿って行われており、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)認定のLCAエキスパート(ある製品やサービスの資源採取から廃棄までの全過程における、CO2排出などの環境負荷を定量的に評価する専門家)が監修。信頼性と第三者性を確保し、企業にも生活者にも安心感を提供する。その後、売場展開や購買行動の変化、売上データを活用した効果測定までを通じて、環境配慮が「売れる理由」へと昇華されていく。

実際、無印良品の京都・有明・恵比寿の3店舗では対象商品の売上が147%に増加。キッチン&マーケット(ルクア大阪)でもスコア表示された商品群は、売上が127%に増加するなど明確な成果を上げている。企業にとっては、スコア導入が販売戦略の一環となり、脱炭素への投資動機にもなる。生活者にとっては、「選ぶこと」が環境行動につながる体験となり、脱炭素が「自分ごと」になる。

特に印象的なのは、「難再生紙」のCO2削減性能を可視化した取り組みだ。再利用が困難とされてきた古紙の資源化プロセスを工場で確認し、その技術的な革新性を実感。デカボスコアによって市場でその環境価値が伝わると、導入先では売上目標を大きく超過する成果を記録した。

さらに、神奈川県庁、環境省、愛媛県などの行政との協働、楽天やJリーグのガンバ大阪といった民間企業とのパートナーシップなど、社会との接点を持った多様な展開を進めている。教育・地域振興の現場でも活用が進み、「環境配慮=価値」であるという認識が社会に根付きつつある。単なる商品選択にとどまらず、交通手段の選択や地域産品の購入など、生活全般へと拡張可能な汎用性を備えており、ライフスタイルの全体を巻き込む力がある。

現在、デカボスコアは約265社、1000点超の商品に導入されている。今後3年間で認知率60%、2030年までに導入企業1000社、商品1万点超を社会実装することを計画している。

目下の課題は「認知拡大」と「導入標準化」だ。そのために大手小売との連携による常設棚「デカボ商品棚」の展開、自治体との地域キャンペーンの強化、教育・まちづくり施策との連携が進められている。

算定プロセスの簡素化や表示単位の課金モデルなど、運営の持続性にも配慮した設計を進めており、将来的には教育や行政施策との連携によって、デカボスコアを「新たな社会インフラ」として位置づけることを目指している。

われわれが日常で手に取る商品がどれほど環境負荷軽減に軽減できているのかを分かりやすく提示する。Earth hacksのこの取り組みが広まれば、誰もが無理なく環境保護に参加できる日が来るのかもしれない。

◇ ◇ ◇


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