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ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(2/3)

Story of a Chinese Woman Living in Japan, Part. 2

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 ちょうど息子も孤独だったので、仲間を見つけていっしょに遊ぶのもいいと思いました。この数カ月、泣いてばかりいたことで息子に与えた心の痛手が治ることを、私も望みました。

 そうして、わが家に3、4人の子どもが来るようになりました。ある子は昼に、ある子は夜にやってきて、うちの子といっしょに食べたり、入浴したりしました。子守りのスキルは高くありませんが、ほかの子も自分の子と同じように接しました。私自身、彼女たちに感謝の気持ちでいっぱいでした。この子たちが来てからうちの子も明るくなり、以前のように四六時中くっついていることもなくなりました。息子のほうも母親に笑顔が戻ったのを見て、安心したのでしょう。おのずから友だちと遊ぶようになりました。こうしてわが家は、ミニ託児所になったのです。

 でも、ミニ託児所の寿命は長くはありませんでした。半年たったころ、夫が反対し始めたのです。毎日、昼夜を問わず中国人が出入りして、わが家のまともな生活に影響を及ぼしたのはもちろん、近所から白い目で見られてしまったからです。夫は期限を決め、それまでに「子どもたちをもう来させないようにしてくれ」といいました。やむを得ずママたちと相談し、託児ができるのはその月までとなりました。

 もともと夫婦の関係もあまりよくなく、この件でさらに悪化するのは避けたかった。と同時に夫にも相談し、「子どもたちも困っている。もし来月から来られなくなったら、ママたちにしても適当な保育園を見つけるのは難しい」と話しました。そのころ夫はいくつかのマンションを貸し出していて、ちょうど2階のテナントが空いていたので、「じゃあ、そこを使いなさい。1年間だけだ。でも家賃は払ってもらうよ」といってくれました。

 それから、今度は家賃や光熱費などの経費についてママたちと相談しました。その半年というもの、私が無償で手助けし、子どもたちをお風呂に入れ、動物園や遊園地に連れて行った。物を買い与えたこともある。それならいくらか納めるのも当たり前のこと。お金を払ったとしても安心して仕事に向かえる。経費を払えば、もしや日本人の先生を呼んで、子どもたちに日本語教育ができるかもしれない、などなど。物わかりのいい親たちで、さまざまな意見が出ました。

 お金のやりとりが発生すれば、そこはホームスタイルの託児所ではなく、ミニタイプの保育園になります。親たちの意見ももっともで、中国語だけでなく日本語も学ばなければならない。しかも保育の経験のある先生を呼んで教育すべきだ、と私も大いに賛成しました。

 こうして私の初めての保育園が、当時の夫が所有するマンションの2階に開設されたのです。約120平方メートルの広さで、もともと内装は済んでいました。バスルームとキッチンの設置は、夫が資金的援助をしてくれましたが、先生を招く費用〔給料〕や家賃、光熱費は、私たちが捻出しなければなりませんでした。

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