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ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(1/3)

Story of a Chinese Woman Living in Japan, Part. 1

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 東京に着くと、その友人が当座の住まいを探してくれましたが、生活するにはお金がいります。日本語もわからないのに、どうして仕事が見つかるでしょう。唯一の仕事は、やはりバーのホステスでした。いっそのこと帰国しよう。でも身分を証明するものさえなくて、どうやって帰国しよう。どうにか帰国しても家族になんて説明するのか、などと思い悩み、結局、日本に残ってから考えようと決めたのです。

 脱出してから、例の会社の人間がすぐに私の家族に連絡し、私が逃げたことを伝えました。しかも私が数々の悪事を働いたといい、私に連絡をとってただちに戻ってこさせろ、でないと暴力団や警察が捜し出すぞ、とおどしたのです。恐ろしかった。本当に、日本全国の暴力団と警察が私を捜すのだと思いました。

 東京で、ついに私を引き取ってくれるバーを見つけ出しました。台湾人のママが開いたところです。彼女はとてもいい人で、住まいと食事をあてがってくれました。そのバーは家庭的な小さな店で、5、6人も入ればいっぱいのスペースです。ふだんはトイレ掃除や接客などを手伝いました。そこで半年ほど働いて、最初の夫と知り合いました。そのころ彼はバーの顧客で、しょっちゅう来店していたのです。本当にいい人だと思いました。かなり年上でしたが、当時の私にはよりどころが必要だった。それで彼とつきあい始め、結婚、出産に至りました。

わが子を入れた保育園への不満

 そのころ私は、日本には保育園や幼稚園が少ないと感じていました。区立の保育園に入れたくても、順番待ちをしなければならない。公立のほうが、費用が安いからでした。やっとのことで子どもを保育園に入れたのですが、言葉が通じないのはやっぱりつらかった。しかもそこでの保育の仕方は、私にはわからないことが多かったのです。

 たとえば子どもがおもらしをすると、先生は部屋の外で子どもを椅子に座らせて、母親が来るのを待たせます。私には理解できなかった。先生がなぜ衣類をとりかえてくれないのか、しかも部屋の外に座らせるのか。私は区役所に苦情をいいに行きましたが、彼らも私の話が聞き取れない。ただ、私が怒っているのがわかるだけでした。あまりに多くの苦労がありました。また子守りに関して、夫ともめることもよくありました。

 保育園は子どもの入園前に、親を教育します。まず子守りや子育て、子どもの教育がいずれも親の仕事であり、保育園は手助けするだけだと教えます。たとえば園内で子どもが体調をくずします。ふつう1日に2回、子どもの体温をはかりますが、体温が37・5度を超えると保育園は電話で「すぐ迎えにくるように」と親を呼び出します。しかし子どもはいつ病気にかかるかわからない。子どもの急病ですぐ休むような母親を雇いたいという経営者は多くありません。

 私はそのころ、息子を2歳で保育園に入れました。入園させたら、アルバイトをするつもりでした。でも全く働けなかった。しかも先ほど述べた、おもらしのあとの保育園の対処法に、私はとまどいを覚えていました。

 保育はまず、子どものことを考えなければなりません。親なら当然子どものことを考えるでしょう。実際、親と先生の目標は一致していて、全て子どものため、であるはずです。ですが、私の1人目の子が入園した保育園では、先生は子どもを見るより、自分を守ることのほうが多いように思えました。保育園で何か事故があってはならないからです。

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