最新記事
健康

がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「内側」から食い尽くす...カナダの大学が発表

Team of Scientists Engineer Bacteria That Could Eat Cancer From Inside Out

2026年2月26日(木)12時35分
メリッサ・フルール・アフシャー

酸素耐性をつけると新たなリスクが

クロストリジウム・スポロゲネスは腫瘍の深部では増殖できるが、わずかとはいえ酸素が存在する外縁部では生存できない。結果、腫瘍を完全に破壊する前に死滅してしまう。

研究者らは、この問題の解決の糸口を遺伝子工学に求めた。

彼らは、別の細菌から、クロストリジウム・スポロゲネスが酸素に耐えられるようにする遺伝子を組み込んだ。これにより、腫瘍外縁部へと移動する際、やや高い酸素濃度の環境でも細菌がより長く生存できるようになる。


しかし、クロストリジウム・スポロゲネスに酸素耐性を与えることは新たなリスクも生み出した。この遺伝子が早い段階で活性化すると、血流など本来増殖を意図していない酸素の豊富な場所で生存してしまう可能性があるのだ。

それを防ぐために、研究チームは「クオラムセンシング」と呼ばれる、細菌が元来備えている情報伝達の仕組みを利用した。細菌は増殖する際に化学物質を放出し、それを互いに感知している。細菌の数が少ないうちはその物質の濃度も低いため反応は起こらないが、数が増えて一定の密度に達すると濃度が高まり、特定の遺伝子が働き始める仕組みだ。

今回の場合、酸素耐性遺伝子は、腫瘍内部に多数の細菌がすでに集まった後にのみ作動するよう設計されている。そのため、細菌は酸素の多い環境では活動せず、がんの内部にしっかりと定着した後になって初めて、付与された生存能力を発揮するようになっている。

マーク・オーコイン教授(化学工学)は「細菌の胞子は腫瘍内に入り込み、栄養が豊富で酸素のない環境を見つける。われわれは今、腫瘍の中心部に細菌を定着させることができている。この細菌が体内の腫瘍を取り除く働きをしている」と述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円近辺へ下落、イベント一巡で

ビジネス

豪州債市場、発行額が最高更新 年金マネー流入

ビジネス

日銀の金融政策、為替誘導を目的としていない=高市首

ビジネス

トランプ関税の混乱、新興国経済にまだ打撃見られず=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違…
  • 5
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 6
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 7
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 8
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 9
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中