最新記事
ヘルス

細胞にストレスとなる「毒」が健康に役立つ? 老化原因物質を無毒化し優れた抗酸化作用をもつ植物成分とは

抗がん剤となる植物の防御物質もある

植物の防御物質としてよく知られるもう1つの成分は、グルコシノレートだ。

グルコシノレートはブロッコリーやキャベツ、ケールなどアブラナ科の野菜に豊富に含まれている。そのなかでもトップクラスと言われるのがブロッコリーの新芽で、成長したブロッコリーのつぼみに含まれる量の20~100倍も含まれている。ブロッコリーやその新芽を咀嚼すると、そのなかの酵素がグルコシノレートと混ざり合って、口のなかで「スルフォラファン」という新たな成分が生まれる。

あなたが昆虫ではないことをダーウィンに感謝しよう。なぜかというと、もし昆虫だったら、スルフォラファンは毒になるからだ!

だが人間の場合、スルフォラファンは抗がん剤になる。また、抗酸化作用の経路であるNrf2を活性化し、グルタチオンの量産も促してくれる。

books20230502.png動物実験では、炎症性の強い毒素の影響を受けていても、スルフォラファンが脳の炎症を直接抑えてくれることが、繰り返し証明されている。そのためスルフォラファンは、脳の過度の酸化や炎症とつながりのあるパーキンソン病やアルツハイマー病、外傷性の脳の損傷、統合失調症、うつ病の治療薬や予防薬としての効果を見込まれて、研究が行われている。若者を対象にした興味深い研究では、スルフォラファン(ブロッコリースプラウトから抽出した)が、中等度から重度の自閉症の症状を大幅に軽減することがわかった。だがスルフォラファンによる治療が終わると、この効果は弱まった。

さて、適切なストレスは、あなたの友だちだということが、これでわかってもらえたと思う。こういったポジティブなストレッサーは、頑健な脳と身体をつくるためには欠かせない働きをもたらしてくれる。だが、このようなストレスにリスクがないわけではない。

何を試すにしても、身体に聞くことを忘れないでほしい。それでも、ゆっくり慎重に身体に抵抗力をつけていけば、いくらもしないうちに、あなたは自分がどれだけすばらしい人間かを知るだろう。


マックス・ルガヴェア(Max Lugavere)

健康・科学専門ジャーナリスト
映画製作者。「メドスケープ」「ヴァイス」「ファスト・カンパニー」「デイリー・ビースト」などのメディアに寄稿し、「NBCナイトリーニュース」や「ドクター・オズ・ショー」「ザ・ドクターズ」などのテレビ番組に出演、「ウォールストリートジャーナル」紙で紹介されるなど幅広く活動している。講演者としても人気を博し、ニューヨーク科学アカデミーや、ワイルコーネル医療センターなど権威ある学術機関に講師として招かれた。また、スウェーデンのストックホルムで開催されたバイオハッカーサミットでも講演を行った。2005年から2011年まで、アル・ゴアの「カレントTV」のジャーナリストを務める。主にニューヨークとロサンゼルスを拠点に活動を続けている。

ポール・グレワル(Paul Grewal)

内科医
食生活とライフスタイルという視点から減量や代謝機能、不老長寿のための医療を実践し、講演も行っている内科医。彼自身45キロ近い減量に成功し、その体重を維持している。大きな誇りと情熱を持ちながら、患者が健康に生きるために楽しく続けられる、万人に適用できる療法を探る。ジョンズ・ホプキンズ大学で細胞・分子神経科学の学士号を取得。ラトガース大学メディカル・スクールで医学を学び、ノース・ショア・ロング・アイランド・ジューイッシュ・ホスピタルで研修課程を修了。MyMDメディカルグループを創設し、ニューヨークシティで開業、金融会社や健康管理会社のメディカルアドバイザーを務めている。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トヨタ株主総会、日野・ふそう統合「しっかり支援」 

ビジネス

午前の日経平均は反落、米株安や円高嫌気 4日続伸の

ビジネス

不動産ファンドのBGO、日本で数千億円規模の案件 

ワールド

イスラエル国会、解散を否決 ネタニヤフ政権は選挙回
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中