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ドラマ『ホット・ゾーン』に学ぶリスクとの向き合い方

モーリー・ロバートソン:ウイルス同様に「偽情報も進化する時代」に備えよ

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2019年10月8日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版広告チーム

<感染・発症すると致死率90%と言われたエボラウイルスがアメリカ本土で初確認された、1989年の衝撃的な事件。その一部始終を克明に記録したノンフィクション本に基づき、ナショナル ジオグラフィックが完全ドラマ化したのがこの『ホット・ゾーン』だ。事件から30年を経てドラマ化された社会的背景や、作品の見どころ、日本で今観るべき意義などについて、有識者が語るインタビューシリーズ>


▶︎ドラマ『ホット・ゾーン』に学ぶリスクとの向き合い方
▶︎岡田晴恵:訪日客急増の2020年、感染症は「今そこにある危機」になる可能性

──まず『ホット・ゾーン』をご覧になって、どんな感想をもたれましたか。

非常に濃い展開で、視聴者を引き込む描写や仕掛けがたくさんありますね。全6回のシリーズですが、1話を観終えるとすぐ次が観たくなります。

80年代にアメリカで起きた事件を題材にしていますが、後半に出てくる米陸軍所属の専門家チームによるエボラ制圧作戦などは当時報道されず、一般には知られていなかったのです。(ワクチンも治療法も確立されていない)バイオセーフティー・レベル4のウイルスを扱う研究者たちや、危険で過酷な作戦に臨んだ兵士たちを描くストーリーも興味深いものでした。

施設の機器や家庭の家電、食生活などは80年代を忠実に再現しつつ、映像面ではGoProのアクションカメラを使ったようなローアングルの撮影手法など新味を感じさせる演出もあります。

序盤で印象的だったのは、厳重な感染予防策が講じられているはずなのに、判断ミスや不作為などの連鎖で事態が悪化するエピソード。責任を取りたがらない中間管理職も出てきて、現代の災害対応や大事故にも通じる問題を感じました。

──米陸軍感染症医学研究所と米疾病管理予防センター(CDC)という、どちらも国の機関である2つの組織が、互いに縄張り意識をもつライバルのように描かれています。そうした関係は、日本人にも身近な縦割り行政の弊害を思わせますが、2001年9月11日の米同時多発テロ事件(9.11)を経て、現在までに変わったでしょうか。

9.11については、事件の前に安全保障を担う諸機関が情報を共有したがらず、脆弱になった部分を実行犯が突いて攻撃を成功させたとも言われています。そうした縦割りの弊害への反省から、テロから自然災害まであらゆる国家的リスクを担当する国土安全保障省が作られました。今回のドラマ化では、そんな経緯を踏まえて、過去の縦割りの弊害を描いていると受け止めました。

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──アフリカでエボラウイルスが初めて発見されたのが70年代、エボラウイルスがアメリカ本土で初確認されたのが89年。ドラマの原作本が出版されたのは94年ですが、それから四半世紀を経て今回ドラマ化が実現した時代背景をどのように見ていますか。

2010年代に入ってもエボラ出血熱の流行が散発的に続いていることに加え、地球温暖化による伝染病の流行地の変化もあるでしょう。たとえば熱帯で流行するマラリアやデング熱などは、温暖化の影響で流行地域の北限が上昇しているとも言われています。

さらに、ネット時代ならではの悪影響も指摘したいですね。典型的な例は、かつてほぼ根絶されたはずの麻疹(はしか)が、反ワクチン運動によって再流行していること。以前別の媒体で書いたのですが、「ワクチンで自閉症になる」という説があって、その元ネタは英国人医師が98年に発表した論文ですが、後に捏造が発覚して掲載された学術誌から永久削除されました。しかし、そうした反ワクチンの考え方が、新たな偽情報、偏見やヘイトの言説を取り込んで"突然変異"のように伝染力を高めて広がっている。それは、ウイルスが突然変異して感染力を強めるのとよく似ています。

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