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ドラマ『ホット・ゾーン』に学ぶリスクとの向き合い方

岡田晴恵:訪日客急増の2020年、感染症は「今そこにある危機」になる可能性

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2019年10月15日(火)11時00分
ニューズウィーク日本版広告チーム

<感染・発症すると致死率90%と言われたエボラウイルスがアメリカ本土で初確認された、1989年の衝撃的な事件。その一部始終を克明に記録したノンフィクション本に基づき、ナショナル ジオグラフィックが完全ドラマ化したのがこの『ホット・ゾーン』だ。事件から30年を経てドラマ化された社会的背景や、作品の見どころ、日本で今観るべき意義などについて、有識者が語るインタビューシリーズ>


▶︎ドラマ『ホット・ゾーン』に学ぶリスクとの向き合い方
▶︎モーリー・ロバートソン:ウイルス同様に「偽情報も進化する時代」に備えよ

──岡田先生は国立感染症研究所に研究員として勤められた経歴をお持ちですが、ドラマ『ホット・ゾーン』の研究施設での描写などはどのようにご覧になりましたか。

国立感染症研究所(東京都武蔵村山市)は安全管理の性能が最も高いバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設で、東京オリンピック・パラリンピックまでに検査体制を整備する目的でエボラ出血熱など5種類のウイルスを輸入したことがニュースになったばかりです。私がまず感染症研究所に入って仕事を始めたのはまさにこの施設でした。今でこそ BSL 4実験施設が稼働になりましたが、当時の最高レベルはBSL3で、そこで HIV (ヒト免疫不全ウイルス)やSIV(サル免疫不全ウイルス)を扱い、感染実験をやっていました。感染したら大変なことになるウイルスの実験するために完全防御し、研究や実験をしていたわけです。

ですから、このドラマで動物の扱い方やウイルスを分離したり検査したりといったやり方というのが非常に忠実に描かれているのがよくわかります。自分が仕事をしていたときの記憶がよみがえり、映像を見ながらシミュレーションのように自然に手が動いていました。序盤で(主人公)ナンシーの手袋に、多分3重ぐらい手袋をしているはずなのですが、その下まで穴が開いて、出血していたというシーンがあります。これは一番やってはいけない事故ですが、このシーンを見てドキッとして、過呼吸になるほどでした。それほどリアルで、研究者にとってもインパクトが強い。これはドラマの制作にプロの研究者が関わっているのだなと感じましたし、単なるフィクションやファンタジーではない、事実を正確に描いたドラマとして観るべきだと思いました。

ドラマ『ホット・ゾーン』── 岡田晴恵:訪日客急増の2020年、感染症は「今そこにある危機」になる可能性

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──米陸軍伝染病医学研究所の獣医病理学者、ナンシー・ジャックス中佐(当時)は原作のノンフィクション本と、このドラマでも監修を務めたそうです。1989年の出来事が今年ドラマ化され、日本でも放送されるということを、どのようにとらえますか。

よくぞこの時期に作ってくれた、というのが正直な思いです。21世紀は高速大量輸送の時代です。だから、かつて風土病で済んだ感染症がその地域で終わらない。短期間で広域、世界に拡散する事態になりうる。だから、その情報共有と事前対策が必要、と私は著書などで訴えてきました。エボラ出血熱にしても、昔はアフリカのジャングルの風土病的な発生・流行で、致死率が極めて高く、重い症状が出るがゆえに感染者は動けずにその村で亡くなって、家族や村民といった周囲の人々に感染させはしても、そこで収束していました。だから、村や町の範囲で感染爆発が終息した。多くても数百人の単位の感染者・犠牲者で終わっていた。それが、アフリカにハイウェイができ、エボラウイルスが村から都市へ潜伏期の人の移動でやってこられるようになった。都市は人口密度も人の流動も激しいので、ウイルスが拡大しやすい。さらに都市には国際空港もあるので、旅客機の国際便で大陸を越えるリスクも出てきた。風土病が、爆発的に流行し、広域に飛び火できる社会環境ができてしまったということです。

事実、エボラウイルスは2014〜15年、西アフリカ三国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)で大惨事となりました。このときにはわかっているだけでも1万1000人以上の方が亡くなっていて、国連は安保理決議を出した。それまでのアウトブレイク(感染者の爆発的増加)に比べて、感染者数も死亡者数も2桁多かった。数百人単位から万単位に上がったのです。流行期間も数か月から年単位と長期化しています。
そして、2018年から始まったコンゴでのエボラウイルスの流行は現在まで続き、世界保健機関(WHO)が今年7月17日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言(緊急事態宣言)を出しました。ゴマという大都市でも感染が確認されました。ゴマは国際空港もあります。現在、コンゴは紛争地域となっていて、国際協力、医療支援がなかなか入っていけない。国際支援の医療支援チームが襲撃されて、撤退せざるを得ない事態も出ている。現在のコンゴの流行状況について、実際のところはWHOも把握しきれていない。エボラウイルス病で、現在、緊急事態宣言が出ていて、終息の目途がたっていない地域がある状況を日本であまり報じていないし、一般の人にはほとんど知られていません。その無関心も怖いと思います。

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