最新記事

中国ビジネス

テスラ、起こるべくして起きた「中国トラブル」

2021年4月26日(月)09時47分

テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。上海のテスラ充電施設で3月撮影(2021年 ロイター/Aly Song)

テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。

テスラはメディアによる一斉攻撃を浴び、規制当局の「お叱り」も受けた。これは外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るか、そして国家の厳しい統制を受けたメディアが批判姿勢に転じた場合、たった1つの苦情案件処理の間違いがいかに大変な危機に転じ得るかを物語っている。

またテスラと言えば業界の慣習を顧みないことで知られ、その象徴的存在が創業者のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だ。めったに誤りを認めない企業文化は米国でこそ、それなりのファンを獲得しているものの、中国では逆効果でしかない。マスク氏の名声ゆえに、中国政府は外国自動車メーカーとして初めてテスラに地元企業と合弁なしの事業展開を認めたのは確かだが、今やテスラはずっと長い歴史を持つライバルメーカーたちが何年も前に得た教訓を学びつつある。

テスラが直面するトラブルは、主に同社の北米事業に関係しているとはいえ、マスク氏や経営幹部らが認識してきた問題の大きさも浮き彫りにしている。ハードウエアに不具合が生じた場合に車両を修理する能力が、猛スピードで伸びる販売台数に圧倒されてしまったのだ。

カークホーン最高財務責任者(CFO)は1月、投資家に対して「サービスの拡充がテスラの将来戦略にとって本当に大事になっている」と認めた。

では今週、テスラはどんな事態に見舞われたのか。発端は上海国際モーターショーが始まった19日、ブレーキが効かないという苦情に対するテスラ側の対応に怒った1人の顧客女性がテスラの展示車両の屋根に上り、不満を叫んだことだ。この動画はソーシャルメディアで拡散された。

騒動がさらに拡大したのは、テスラの対外関係担当バイスプレジデント、グレース・タオ氏がこの女性が「やらせ」ではないかと疑問を呈した後だった。

タオ氏は地元メディアのインタビューで「事実は分からないが多分、彼女はかなりのプロで、(誰かが)背後にいるはずだと思う。われわれは妥協するつもりはない。これは新車開発のプロセスにすぎない」と発言。直後にテスラはあわてて火消しに走り、報道の撤回を求めてきた、とこのメディアが20日、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)で明かした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマート、数百人削減へ 本社などへの異動も要

ビジネス

MSCI銘柄入れ替え、日本株はアシックス1銘柄を新

ワールド

北朝鮮、盗んだ1.47億ドル相当の暗号資産を洗浄=

ビジネス

米家計債務、第1四半期は17.6兆ドルに増加 延滞
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中