最新記事

米中貿易戦争

トランプの対中貿易戦争で米企業が悲鳴 輸入関連を襲う3つのコスト増

2019年4月8日(月)11時00分

トランプ米大統領による対中関税で、米国の輸入企業は税関に納める保証金の値上げなど思わぬコスト増に苦しんでいる。写真はカリフォルニア州のロサンゼルス港。3月29日に撮影(2019年 ロイター/Mike Blake)

スティーブン・ワン氏は、トランプ米大統領による貿易紛争のコストを計算しているところだ。同氏が輸入する中国製のポンプ、バルブ、モーターにかかる関税を支払うために、彼はこれまでの12倍もの保証金を税関に納めなければならなかった。

「税関ボンド」と呼ばれる保証金のコストは増大しており、ただでさえ関税の急上昇に悩まされている輸入企業に追い打ちをかけている。トランプ政権が、中国からの輸入製品や鉄鋼・アルミニウムへの関税を数百億ドルも追加しているからだ。

昨年実施された関税引き上げは、製造コストを上昇させ、数十年の実績を持つグローバルなサプライチェーンを覆し、物価の上昇をもたらし、結果的に販売が伸び悩み、企業はやむなく投資を先送りしている。ひいては、グローバルな成長展望に陰りをもたらし、金融市場の混乱が生じている。

他にもあまり目立たない副作用が生じている。その1つが、米国の税関ボンドのコスト上昇だ。目立たないとはいえ、追加コストを負担する余裕に乏しい中小企業にとって、その影響は死活問題になりうる。

トランプ政権による税率の引き上げに伴って納付する関税額が増大したことで、輸入企業は、中国製品や外国産の鉄鋼・アルミニウムを米国に輸入する際の追加コストを支払う能力があることを証明するため、これまでよりもはるかに高い額面のボンドを納めなければならない。

ロイターが輸入企業、貿易保険会社、通関代行事業者10数社に取材したところ、税関ボンドに要するコストが500倍にも増加した例があるという。

「キャッシュフローのやりくりが厳しくなっている」と、冒頭のワン氏は言う。貿易紛争が長引くようであれば、利益率が低く資本力の弱い企業は倒産する恐れがある、と彼は警告する。

ワン氏は、産業用機械を手がける多国籍企業のCNHインダストリアル向けに、中国から建設用・農業用設備の部品などを輸入するヘングリ・アメリカ社のトップを務めている。

ヘングリが扱う製品の関税がゼロから年間600万ドルに増えたことを受け、米国税関当局は同社に対する税関ボンドを以前の5万ドルから60万ドル相当に引き上げた。

他の輸入企業も、同じような急激な増額があったとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中