最新記事
中国経済

中国からの資本流出、食い止めが困難な理由

2016年1月26日(火)11時45分

 海外に投資する手段の1つは、国内のミューチュアルファンドに外国株の購入を認めている適格国内機関投資家(QDII)制度だ。

 ある国際投資銀行の富裕層資産運用担当者は「ヘッジの妥当性を認識している顧客がわたしのところにやってくる。QDIIは非常に高い人気があるので、ある証券会社はQDIIを利用するためだけの手数料を6%に設定しているが、それでも支払う人々がいる」と話した。

 別の上海の資産運用関係者も、QDIIの借り入れコストは需給ひっ迫によって最近数週間で高騰していると認めた。

衰えない投資需要

 政策担当者は、中国企業がバリューチェーンの上方に位置できるようになるために必要な研究開発投資をしないで、その代わりに幹部が海外の豪華マンションなどに資金を回してしまう事態を懸念している。

 ただ残念なことに、中国政府にとって海外への資金流出を食い止めるのは極めて難しい。多くの投資手段は合法である上に、ある意味で中国の国益にかなうものだからだ。

 例えば当局は中国企業が海外企業をより買収しやすくして世界における同国の影響力を高めたり、外国の同業者取得による中国企業のバリューチェーン上位化を狙っているが、合併・買収(M&A)の形を取っている資金流出を抑制すると、戦略的な投資までも阻むことになりかねない。

 外国投資が中国国内に資金をとどめられてしまうとみなすようになれば、当局が推進する人民元の国際化計画も崩れ去るだろう。

 こうした中で複数の運用担当者によると、中国当局は打ち出せる対応策として、QDIIなどの投資枠を停止したり、銀行に資金流出の引き締めを迫るなどの措置を講じている。

 当局が今後、さらに資金流出防止の手を打ってくるかどうかはまだ分からない。しかし海外投資需要が衰えると予想する声はほとんど聞かれない。

 コメルツ銀行(シンガポール)のアナリスト、ハオ・ゾー氏は「中国国内に存在する個人や企業の膨大な貯蓄資金は現時点で、国内投資からは妥当なリターンを得られないのは明らかだ。その結果、資金流出が長期化し得るあらゆる機会がある」と指摘した。

(Samuel Shen、Pete Sweeney記者)

[上海 25日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中