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CEO大統領の賢い不況戦略

2010年5月17日(月)13時46分
マイケル・フリードマン、李炳宗(ソウル支局)

 競争相手が経費節減に走る不況の時期に、新しい市場や製品へ積極的な投資を行うのは、賢い多国籍企業なら当然の戦略。しかし国としてこれをやってのけたのは、恐らく韓国が初めてだろう。そんな偉業が可能になったのは、大統領官邸で本物のCEO(最高経営責任者)が経済の舵取りをしているからだ。

 韓国の大企業の1つ現代建設を経営していた李明博(イ・ミョンバク)大統領は、不況に見舞われた80年代初頭にも国外で新しい市場を開拓しようと積極的に投資を行った。今は大統領として、同様に挑戦的な長期計画を打ち出している。おかげで韓国は、他のどの先進国よりも世界同時不況をうまく乗り切った。

 09年1月、李は不況にあえぐ韓国企業に対して危機には常に終わりがあると諭し、投資を続けるよう促した。李の神髄はただ口を出すだけでなくカネも出すところ。07年にGDP(国内総生産)比3・37%と、既に世界最高レベルだった韓国の研究開発関連の支出を5%にまで増やすことを公約。現在も企業の研究開発投資に関する税控除拡大を検討している。

 結果として韓国のGDP成長率は09年の7〜9月期には前期比3・2%増に達し、先進国の中では先陣を切って不況を抜け出した。米モルガン・スタンレーによると、携帯端末や液晶テレビ、自動車といった韓国の輸出製品はむしろ世界市場でシェアを拡大している。

 李はもちろん、どこかの銀行幹部のように高額のボーナスを手にしたりはしていない。

[2010年5月19日号掲載]

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