最新記事

経済政策

オバマノミクスを売り込む8つの方法

オバマが景気回復の兆しを強調すればするほど庶民の怒りは高まる。11月の中間選挙までにこのジレンマを解決するには──

2010年4月5日(月)18時29分
エレノア・クリフト(本誌コラムニスト)

至難の業  オバマは「痛み」を味わっている人たちの反感を買わずに、経済立て直しの成果をアピールできるか Jonathan Ernst-Reuters

 医療保険改革法の成立にこぎつけたバラク・オバマ大統領が次に取り組むべき課題は、雇用情勢の改善だ。4月2日に発表された3月の雇用統計では就労者数が3年ぶりの大幅増を示したが、失業率は9.7%を記録し、状況の厳しさは変わっていない。

 いまオバマに求められるのは、ほとんどの国民がまだ恩恵を実感できていない段階で、自身の政策の成果を十分にアピールするという政治的な離れ業だ。クリントン政権を支えた政治コンサルタントのジェームズ・カービルいわく、それはあらゆる政治的コミュニケーションの中で最も難しいこと。しかもそれに失敗すれば、選挙で有権者から制裁を加えられると、カービルは言う。

 1992年の大統領選で父ブッシュ大統領は、景気回復の功績を訴えて再選を目指した。しかし、率先して消費拡大に努めていることをPRするために、遊説先のショッピングモールで靴下を買うパフォーマンスを行って、失笑を買う有り様だった。ブッシュは、庶民の生活の実情を理解していないという印象を持たれていた。

 この大統領選で勝ったのは、「問題は経済だ!」をキャッチフレーズに選挙戦を戦った民主党のビル・クリントン。しかし2年後の中間選挙で、民主党は議会の上下両院で少数派に転落してしまう。アメリカ経済は好調で、7.8%に達していた失業率も5.7%まで下落していたのに。

 大統領が経済的成果についていくら熱弁をふるっても、国民が納得していなかったと、クリントン政権のスタッフとして活躍した世論調査専門家スタンリー・グリーンバーグは振り返る。

大統領は「傲慢」で「無理解」

 白人のブルーカラー労働者(特に男性)はえてして、景気が悪化したときとりわけ大きな打撃を受ける。この層は、景気回復の恩恵に浴するのも一番後だ。エリートたちが景気回復の兆しを口にすると、このような人たちは神経を逆なでされて、怒りを感じる。

 カービルとグリーンバーグは先頃、ワシントンの報道関係者を集めた朝食会で、2人が共同で運営する非営利団体デモクラシー・コアの最近の世論調査結果について講演した。それによると、現在のアメリカの経済状況に人々は極めて悲観的だという。

 なかでも悲観論が強いのは、未婚の女性と30歳未満の若年層、そして08年の大統領選ではじめて選挙権を手にしてオバマに投票した若者たちだ。これは、景気後退により最も打撃を受けている層と重なる。

 オバマは1月末の一般教書演説で、自身の経済政策が功を奏して恐慌突入を防げたと訴えた。しかしグリーンバーグが有権者の意識調査を行ったところ、「人々はそういう主張に反感を抱いていた。傲慢な態度であり、大統領が庶民の生活を理解していないと感じていた」。

 オバマ政権は医療保険改革の成果を宣伝するが、回答者の反応は冷ややかだったという。有権者の主な関心はあくまでも雇用問題。どうして政府がこれまで雇用危機に手を打ってこなかったのか、有権者は釈然としない思いでいる。

意外と知られていない減税

 もちろん、政府が雇用問題をひたすら強調しても、雇用状況が改善する保証はない。しかし、まだ痛みを感じ続けている人々に反感を抱かせずに、成果をアピールする方法はいくつかある。

 7670億ドルの景気刺激策の3分の1が減税であることを強調する(この点は意外と知られていない)。

 医療保険改革法に、中小企業向けの税額控除措置が盛り込まれていることを強調する。

 財政赤字対策を話し合うために超党派の委員会を設置したことを宣伝する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 7
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 8
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中