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米ファンド

ハゲタカ業界も淘汰の時代

2009年9月8日(火)14時50分
マシュー・フィリップス

 金融危機の後始末に追われる米連邦預金保険公社(FDIC)は8月26日、破綻した銀行を買収ファンド(いわゆるハゲタカファンド)が買い取りやすくする規制緩和に踏み切った。銀行の買い手を呼び込むためだ。

 新ルールでは、破綻銀行を買い取ったファンドは最低3年間は売却できない。これは買収ファンドの習性に沿ったルールと言える。多くのファンドは、買収先の資産を担保にした借入金で企業買収を繰り返し、買った企業を短期間で切り売りすることで巨額の利益を挙げてきた。

 だが信用危機でこうしたビジネスモデルは基本的に死んだ。今やハゲタカファンドは、大金をはたいて買収したものの景気悪化で買い手のつかなくなった企業を抱え込み、自分たちで経営する破目に陥っている。

 前途は多難だ。12年以降、KKRやブラックストーンなど大手ファンドがブーム時に借り入れた総額約4300億ドルが次々と返済期限を迎える。資金調達も困難になっており、今年1~3月に調達した買収資金は前年同期比で78%減少した。ボストン・コンサルティング・グループは、買収ファンドの20~40%が今後2~3年で破綻すると予測している。

 長期的に見れば、ファンドの淘汰はいいことかもしれない。生き残ったファンドが買収先企業の経営強化に力を入れるようになれば、過去10年間のこの業界の行き過ぎたビジネス慣行を正せるかもしれないからだ。

 だがFDICは注意が必要だ。さもないと破綻した銀行が、破綻しつつある買収ファンドに買い取られる事態になりかねない。

[2009年9月 9日号掲載]

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