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2009.09.16

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外交官たちが愛した湖畔の別荘地

中禅寺湖の意外な「もう一つの顔」

2009年9月16日(水)10時54分
ジョシュア・ハマー(本誌元エルサレム支局長)

 私が中禅寺湖と出合ったのは、調査旅行で日本を訪れたときのこと。1923年9月1日の関東大震災に居合わせたイギリス人やアメリカ人について、本を書くためだった。

 登場人物の1人に、東京在住のアメリカ大使館付海軍武官がいる。彼は中禅寺湖畔にある別荘に滞在中、大地震を経験した。

 彼や妻の日記には、そのころの外国人の生活が驚くほど詳細に記されている。

 およそ1890年から1930年ごろまで、中禅寺湖は外国人の避暑地として中心的な場所だった。彼らはヨットに乗ったり、ハイキングを楽しんだり、湖で泳いだりした。そして、大勢の日本人とともに男体山に登って、頂上にある二荒山神社の奥宮に参拝した。

 昨年夏、私は中禅寺湖を訪れて、湖の周辺にまだ残っている当時の別荘を調べて回った。イタリア大使館の別荘跡は小さな博物館に生まれ変わっており、一般公開されていた。

 そうした建築物のたたずまいは、20世紀初めの日本に暮らす欧米人の生活がどんなものだったのか
を思い起こさせる。私の本はまさに当時の日本の姿を描くものであり、なんとも実り多い訪問だった。

 もちろん、現在の中禅寺湖は日本人でにぎわう観光地。しかし今でもイギリスやフランス、ベルギーなどの大使館は、老朽化の進んだ古い別荘を避暑のために利用している。

 美しい湖、周囲に連なる山々、湖畔にたたずむ神社。外国人がこの地を離れようとしないのも無理ないことだ。

[2005年3月 9日号掲載]

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