Picture Power

【写真特集】台湾の美景を不条理が浸食する

VISION OF TAIWAN

Photographs by WU CHENG-CHANG

2020年10月03日(土)17時30分

【台西 2009】夜明けの空に美しく輝くのは台湾最大の石油化学工業団地。手前にはカキ養殖場が広がる。工業と漁業、どちらも人々の生活を支えるのに欠かせないものだが、ここでは2つがあまりに近接しており、経済活動と環境のバランスを考えずにいられない

<急激な近代化は台湾の環境に何をもたらしたのか>

夜明けの海辺や夕闇迫る水田......台湾の美しい自然の風景の背後に、アンバランスな建築物や照明が写り込む。「台湾『美景』」と題した一連のシリーズで私は、急激な近代化が台湾の環境に何をもたらしたのか、私的な観察と肌で感じた経験を形にした。

それぞれの風景の中に忍び込むのは、私自身だ。大画面をバックにたたずみつつ、顔にはストロボを当てて白く飛ばした。台湾の美しい風景の前に立つ顔のない人間からは感情が読み取れず、制御不能で視界を奪われ、方向性を見失った者の姿が現れる。

一見すると壮観な自然の風景にも、不条理な人工物や環境危機が見え隠れしている。顔のない人間を置くことによって私は、周りの環境に無関心で、現実を見ようとしない人々を超現実的に描き出した。

新型コロナウイルスが地球上の人類全てに強烈な影響を与えている今、立ち止まって考えるべきときなのかもしれない。私たちはどんな人生を、どんな環境を望んでいるのだろうかと。

――呉政璋(フォトグラファー)

pptaiwan02.jpg

【T 霸与稲田 2011】高速道路沿いに立つT字形の巨大広告は商業主義によって生み出されたもの。中部・彰化県の水田に設置されたこの広告は、稲と同じように数も大きさも成長している。農業も広告業も、懸命に働き、実りを得るという点では同じかもしれない

pptaiwan03.jpg

【佳冬 2011】台湾南部の屏東県佳冬は魚の養殖で有名な地域。2011年にこの地の養殖池を訪れたとき、私の身長より高く張り巡らせた送水管を目にした。養殖池の運営のためにはパイプが必要なのかもしれないが、その光景は興味をそそられるものだった

pptaiwan04.jpg

【広告看板 2011】T字路の交差点に色も形も目的もさまざまな看板が並ぶ。もちろん、これらが人々の視線を集め、その広告費にお金を払う人がいるからこそ、これだけの看板が路上に設置される。広告に挟まれたカーブミラーなど、もはや誰の目にも留まらない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story