コラム

「国を救うヒーロー」になった極右TikTokポピュリストは、なぜルーマニア大統領になれなかった?

2025年05月20日(火)18時25分

共産主義後のルーマニアに失望する有権者

イタリア、ドイツなど他のEU加盟国に移住した人々は1回目投票で7割強がシミオン氏に投票した。「共産主義後のルーマニアで自分の道を見つけられずに国を去った人々が多い。つまり共産主義後のルーマニアに失望したと言えるだろう」とベルナッキア氏は言う。

同じくルーマニア人ジャーナリストのクラウディウ・ポップ氏は「極右の台頭は政治的無能、汚職の横行、大都市圏以外での劣悪な生活水準が原因だ。SNSのアルゴリズムによって形成されるエコーチェンバーがこうした極右支持を増幅させている」と分析する。

「シミオン氏は『ルーマニアでトランプ政権とつながりがあるのは自分だけ』と言い、MAGA(米国を再び偉大な国に)運動のスティーブン・バノン氏にも会っている。シミオン氏が米国の有力者やトランプ政権関係者に会うのに15億〜16億ドルを支払ったとされる疑惑もある」

「ルーマニアがEUとの協力を減らせばEUの経済力が削がれ、トランプ氏にとって有利になるとの考え方もあるのだろう」とポップ氏は語る。しかし司法の介入とトランプ氏に迎合するよりEUの道を進むしかないという決意が極右大統領の誕生をすんでのところで食い止めた。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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