コラム

「街はコロナ危機」でも「市場は株高」が、意外と長引きそうな理由

2020年12月02日(水)12時17分

ISSEI KATOーREUTERS

<コロナ禍の最中にもかかわらず続く株式市場の好調の本質は、単なる「カネ余りによるバブル」ではない>

全世界で新型コロナウイルスの感染が再拡大しているにもかかわらず、株価の上昇が続いている。一部から市場が過熱しているとの指摘が出ているが、背景には多くの要因が重なっており、単なるバブルで片付けられるほど単純な話ではない。

コロナ危機以降、世界の株価は順調な回復を見せているが、特に11月に入ってからの上昇は著しい。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価はとうとう3万ドルの大台を突破し、史上最高値となった。

米製薬大手が相次いでワクチンの治験で高い有効性を確認したことや、米大統領選でジョー・バイデン氏の勝利が確実となり、大型景気対策への期待感が高まったことなどが直接的な理由である。日本市場は基本的に米国に追随するので、日本でも株高が進み、日経平均株価も2万6000円を超えた。

だが、足元の感染状況は悪化する一方であり、航空業界や外食産業などを中心に多くの企業が打撃を受けている。こうした状況下での株高であることから、一部からは行き場を失った投機マネーが殺到し、ある種のバブル状態になっているとの批判も出ている。

確かに株式市場が行き場を失ったマネーの受け皿になっている面があるのは否定できないが、それだけが株高の要因とは言い難い。今回の株高には2つの大きな背景が存在しており、これに目先のワクチン開発や景気対策期待が入り交じったものと考えるのが自然だ。

2つの背景とは、ITと再生可能エネルギーを中心とした新しい経済システムへの期待と、大型の財政出動に伴うインフレ懸念である。

脱炭素社会の到来が近づいている

近年、欧州を中心に脱炭素の動きが活発になっているが、今年9月に中国が2060年までの温室効果ガス排出量ゼロを宣言したことや、脱炭素に消極的だったアメリカでも再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいることなどから、前倒しで脱炭素社会が到来する可能性が高まっている。

国際石油資本(石油メジャー)の1社、英BPは今年9月、20年代後半から再生可能エネルギーのシェアが急上昇し、50年には40%以上が再生可能エネルギーで賄われるという衝撃的な報告書を公表した。石油を通じて世界を支配してきた企業からこうした予測が出たことの影響は大きい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story