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マクロスコープ:政府内に石油製品の需要抑制論、問われる高市政権の危機管理能力

2026年03月31日(火)11時38分

写真は高市首相。2月20日、東京で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon

Tamiyuki Kihara

[東京 31日 ロ‌イター] - 中東情勢の混迷を受け、石油関連製品が深刻な不足状態に陥‌る可能性が指摘されている。これに対し高市早苗政権は、多方面からのナフサ確保など供給面​の対応を優先。需要抑制を呼びかければ買い占めなどの混乱を招き、経済活動が落ち込む恐れがあるとの考えがあるためだ。一方、紛争の早期収束が見通せない中、産業界に加え、政府内⁠からも供給確保には限界があるとして、需要面での対​策に踏み込むべきだとの声が出始めた。景気下押しのリスクを取ってでも長期化に備えるのか、目先の経済活動を優先するのか、高市政権は危機管理能力を正面から問われている。

<需要抑制は呼びかけず>

「異なるサプライチェーン間での石油製品の融通支援など安定供給を図る体制を立ち上げたところだ」。高市氏は30日の衆院予算委員会で、石油関連製品の供給不足に伴う医療用プラスチックへの影響を問われ、こう答えた。同日夕には、赤沢亮正経済産業相に「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当相」を⁠兼務させる人事を発表。自身のソーシャルメディア(SNS)で石油派生品のナフサを原料とする医療機器の供給問題などに触れ、「直ちに供給が滞る訳ではありませんが、代替製品を世界全体から調達するなどの対応を急ぎます」と表明した。

生命にかかわる医療機器に加え、⁠半導体や自​動車部品、塗料や包装材などあらゆる製品の原料となるナフサは、国内需要の6割を輸入に頼る。そのうちの7割は中東依存だ。高市氏は赤沢氏に「安定確保のための具体的対応方針の検討」を指示したが、確保する量や時期の見通しは明らかにしていない。

これに先立ち、木原稔官房長官は同日午前の記者会見で、石油化学各社がナフサを原料とする製品在庫を国内需要の約2カ月分保有していると説明。米国や南米などからの輸入と国内精製でさらに約2カ月分の確保が可能と見込んでいることも明らかにした。ただ、計4カ月分が底をついた後にどう対応するかについては言及を避けた。事態の推移が見通せず、先々まで予見することが困難だとの判断とみられる。

<景気後退、パニックを懸念>

高市氏が安定⁠供給に向けた取り組みを強調し、国民に需要抑制を求めない背景には、経済活動が停滞することで景気の後退を招く‌との懸念があると複数の政府関係者は解説する。政権内には「国民の不安をあおればパニックになる。それは日本経済にとっても、国民にとっても良い⁠ことではない」(⁠官邸幹部)との見方がある。

ここにきて政府内で語られているのが、2020年に世界を混乱させた新型コロナウイルスの記憶だ。同年1月に政府の対策本部が設置されて以降、2月には大規模イベントの中止や臨時休校が相次いだ。外出自粛によって人と人との接触が減り、経済活動は停滞。4月に緊急事態宣言が発出されて以降は一段と抑制が進んだ。

内閣府の資料によると、20年度の実質国内総生産(GDP)は前年度比マイナス4.5%となり、比較可能な1995年度以降で年度としては最大の落ち込みとなった。特に同年4─6月期は個人消費や外需が大きく減少し、前期比マイナス7.9%(年率マイ‌ナス28.2%)と大幅に落ち込んだ。

ある日本政府関係者はロイターの取材に、コロナ禍の混乱を引き合いに「高市氏はとにかく景気を冷やすような​ことはやりた‌がらない。目の前で困っている人への対応を優先⁠する傾向がある」と解説した。

<残る長期化への懸念>

一方で、供給の安定​確保に重点を置く高市氏の姿勢を不安視する声もある。前出の政府関係者は「石油の備蓄をどんどん放出すれば短期的にナフサ自体は作れるだろう」とする一方、「それは備蓄の先食いであって、事態が長期化すれば結局は底をつく」と話す。石油連盟は自民党が24日に開いた会合で、石油備蓄を長期的に活用するため需要対策の検討を要請した。

優先度の高い医療機器の原料にナフサを振り向けるにしても、国内製造には限界がある。ナフサ不足は各国共通の課題であることに加え、仮に確保できたとしても製品化を担っていた国の中には意識的に経済活動を縮小していると‌ころもある。「作りたくても現地工場が稼働しない事例が出てくるだろう」と、同政府関係者は語る。

政府が実施した企業への聞き取り調査によると、人工透析に使うチューブなどの「透析回路」は国内シェア5割を占める日本企業の出荷が早ければ8月ごろから困難になる可​能性がある。手術に使用する廃液容器でシェア7割を握る企業は、生産するタイ工場への⁠ナフサの供給が4月半ばで終了する恐れがある。

影響は統計の試算にも表れ始めた。内閣府は3月27日に発出した月例経済報告に関する資料の中で、原油の国際価格が10%押し上げられ、その影響が持続した場合「1年程度かけて食料価格など消費者物価全体を最大で前年比0.3%ポイント程度押し上げる」と説明。「輸入資源価格が上昇すると、必要輸入量が確保できた​としても、日本経済にとって数兆円のコスト増となる」とも指摘した。

買い占めなどのパニックを含めた経済活動への影響を抑えつつ、長期的な供給をどう安定的に確保するのか。前出の関係者は、国民生活への影響が深刻化してから一気に抑制策を打ち出せば、コロナ禍と同様に経済への悪影響がより強く出ると危機感を募らせる。「需要抑制は集中的にやるのではなく、少しずつ、同じペースでやらなければならない。今すぐに動くべきだ」

(鬼原民幸 グラフィック作成:田中志保 編集:久保信博)

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