焦点:中国の米国産大豆購入、国内供給過剰で再開は期待薄
写真は貯蔵庫に移される大豆。2021年10月、米オハイオ州マシロンで撮影。REUTERS/Dane Rhys
Naveen Thukral Ella Cao
[シンガポール/北京 12日 ロイター] - 中国国内の大豆は、数カ月にわたる記録的な輸入量を経て大幅な供給過剰状態にある。このため米国との貿易戦争休止に伴って、大規模な米国産大豆購入が再開されるとの期待も薄れている。
トレーダーやアナリストは、中国の主要港湾や国家備蓄倉庫にある大量の在庫に加え、圧砕マージン(大豆加工で得られる粗利益)が低調なため、中国の大豆追加購入意欲は限られると警告する。
北京に拠点を置くアグレーダー・コンサルティング創業者のジョニー・シャン氏は「国有企業はマージンが回復するまで、大規模な購入に動くのを見送るかもしれない。(中国の)関税が引き下げられてもなお、マージンはマイナスで、ブラジル産大豆の方が引き続き安い」と述べた。
先月末にトランプ米大統領と中国の習近平国家主席が会談した後、米政府当局者は中国が米国産大豆を年内に1200万トン、来年以降3年で毎年2500万トン買い入れることに合意したと明らかにした。
ただ中国政府は、米国製品に適用する報復関税を停止したが、公式には大豆購入を約束していない。トレーダーやアナリストによると、国有の中糧集団(COFCO)が予約した12月と来年1月出荷分の大豆は数カーゴにとどまっている。
<膨らむ在庫とマージン低下>
中国は今年になって米国産大豆の輸入を控えた一方、米国との貿易戦争が長期化して大豆不足に陥る事態を懸念し、南米地域からの輸入量を急速に増やした。その結果、逆に供給過剰になってしまった。
中国の主要港湾の大豆在庫は今月7日時点で過去最高の1030万トンと過去1年で360万トン増加し、加工業者の保有大豆は750万トンと2017年以来の水準に達したことが、コンサルティング会社、卓創資訊のデータから分かる。
またマイスチールによると、家畜の肥育に使われる大豆ミールの現物価格は天津市や山東省、江蘇省、広東省などで4月のピークから20%余り下落し、1トン当たり約3000元(421ドル)となっている。
中国の大豆加工業者は年央以来赤字が続き、加工拠点がある山東省日照市の今週の圧砕マージンは1トン当たりマイナス190元前後。トレーダーは、少なくとも来年3月までマージンはマイナス圏で推移すると予想する。
オイルシード加工部門を運営する国際的な商社のあるトレーダーは「中国が大豆輸入を増やせる余地はそれほど大きくない。大豆の在庫は膨大で、加工セクターからの需要は非常に鈍い」と明かした。
<見えない大量購入の気配>
COFCOや中国儲備糧管理(シノグレイン)が米国との融和ムード演出のため早急に大規模な大豆購入を再開するとの市場の期待は、まだ現実化していない。
それでも、これらの国有企業が市場環境を無視して大量購入に動く可能性は残る。
ある米政府高官はロイターに「政権は貿易相手が取引の約束を守ると想定している。(トランプ)大統領は貿易相手に約束を果たさせるため、関税率の調整や輸出管理、その他の権利を留保している」とくぎを刺した。
とはいえ、少なくとも2人のトレーダーが見積もった中国の国有企業が抱える大豆在庫はおよそ4000万-4500万トンに上る。
これは中国が昨年米国から輸入した量の2倍で、年度初めの需要期としては5カ月分を賄える。
一方民間の輸入業者は、12月出荷分の大豆はブラジル産を予約し続けている。ブラジル産の1月出荷分の価格は中国への輸送コストを含めて1トン当たり480ドルで、米国産の540-550ドルを下回る。
トレーダーによると、中国の輸入業者による1月出荷分の予約はまだ低調だが、12月分は既に月間需要見込みの4割余りに当たるおよそ200万トンが予約された。
ストーンXのコモディティー(商品)担当チーフエコノミスト、アーラン・スデルマン氏は11日付ノートに「国有企業が年末までに(米国産大豆)1200万トンを買うプログラムに関与している証拠は乏しい。まして来年中の2500万トン購入はなおさらだ」と記した。





