ニュース速報

ワールド

米軍、アフガン撤収完了 米史上最長の戦争終結

2021年08月31日(火)11時19分

マッケンジー米中央軍司令官(海兵隊大将)は30日、米軍のアフガニスタンからの撤収が完了したと発表した(2021年 ロイター/Megan Jelinger)

[ワシントン 30日 ロイター] - 米軍は30日、アフガニスタンからの撤収が完了したと発表した。これにより、2001年の同時多発攻撃をきっかけに始まった約20年に及ぶ米史上最長の戦争が終結した。

最後の米軍輸送機が首都カブールの空港を離陸したことを受け、マッケンジー米中央軍司令官がワシントンの国防総省で記者会見を行い、撤収完了を発表した。

中東の衛生テレビ、アルジャジーラが30日伝えたところによると、イスラム主義組織タリバンの報道官は、最後の米兵がカブール空港から撤収し、アフガニスタンは完全な独立を手に入れたと表明した。

バイデン米大統領は撤退完了後に出した声明で「20年間にわたるアフガンでの駐留が終了した」とし、危険を伴う退避活動に携わった米軍に謝意を示した。

また、国際社会はアフガン出国を望む人々の安全な移動を認めるという確約をタリバンに守らせると表明した。

米軍撤退について、31日午後に国民に向けて演説する方針も明らかにした。

ブリンケン米国務長官は30日、出国を希望している100人以上の米国人が依然アフガンに残されているようだとし、正確な数の把握に努めていると説明した。

<共和党議員は「国辱」と批判>

バイデン氏は31日を米軍の撤退期限としていた。タリバンによるカブール制圧以降のアフガン情勢への対応を巡り、バイデン氏は与野党双方から厳しい批判を浴びている。

共和党のベン・サス上院議員は米軍撤退は「国辱」で、バイデン大統領の「臆病と無能さの結果」だと批判。「大統領は米国人を置き去りにするという道義的に許されない決定を行った。自ら名誉を傷つけた」と強調した。

一方、民主党のシェルダン・ホワイトハウス上院議員はツイッターに「米国の外交官、軍、情報機関に拍手喝采を送る。これほど危険で混乱した状況下での12万人の移送は他の誰にもできなかったはずだ」と投稿した。

米国や北大西洋条約機構(NATO)同盟国は、タリバンが想定を超える速さで実権を握ったことを受けて撤退加速を強いられた。現地には西側諸国に協力してきた数千人のアフガン人が残されている。

マッケンジー司令官は、カブールを深夜に出発した最後の米軍輸送機にはウィルソン米臨時代理大使が搭乗したと明らかにした上で、「米軍兵士全員がアフガンから撤収した。これは100%確実だ」と強調。

「この撤退は多くの悲痛を伴った。退避させたかった全員の出国はできなかった。だが、あと10日駐留したとしても全員は退避させられなかっただろう」と述べた。

ブリンケン氏は、タリバンが国内の反対勢力に報復しない限り、タリバン新政権と協力する用意があると表明。「タリバンは国際的な認知と支持を求めている。いかなる認知と支持も努力して得る必要があるというのが米国の立場だ」と語った。

<今後の関与は不透明>

タリバンは今月15日にカブールを制圧。米国は14日以降、12万2000人を超える人をアフガニスタンから退避させた。

米国や西側同盟国は自国民のほか、現地の通訳や大使館職員、人権活動家、ジャーナリストなどの退避を急いだ。

米兵13人や多数のアフガン人が死亡し、過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力が犯行声明を出した先週の自爆攻撃を受け、退避活動の危険は一層高まった。

米国はISに攻撃の代償を払わせるとしているほか、アフガンが過激派の温床になるのを防ぎたい考えであることから、今回の撤退完了がアフガンへの軍事的関与の終わりになるかどうかは不透明だ。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中