ニュース速報

ワールド

仏ニースで教会襲撃、3人死亡し首切断も テロ警戒の兵士増員へ

2020年10月30日(金)08時35分

 10月29日、フランス南部の都市ニースで、刃物を持ったチュニジア国籍の男が教会を襲撃し、3人が死亡、うち女性1人は頭部を切断された。ニースの現場付近で撮影(2020年 ロイター/Eric Gaillard)

[ニース/パリ 29日 ロイター] - フランス南部の都市ニースで29日、刃物を持ったチュニジア国籍の男が教会を襲撃し、3人が死亡、うち女性1人は頭部を切断された。当局によると、容疑者はアラビア語で「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら犯行に及んだ。警察に狙撃され、重体という。

マクロン大統領は、フランスがイスラム主義者のテロ攻撃を受けたと非難した上で、礼拝所や学校など重要施設を警護するため数千人の兵士を増員すると表明。「フランスは、自らの価値観や自由への志向、信仰の自由に対して攻撃を受けた。われわれは自らの立場を一歩も譲るつもりはないと改めて明言する」と述べた。

カステックス首相は、国内のテロ警戒水準を最高に引き上げた。

警察関係者によると、現地時間午前9時ごろ、刃物を持った男が市内にあるノートルダム教会に侵入し、居合わせた管理人の喉を切りつけたほか、年配の女性の首を切断し、さらにもう1人の女性に重傷を負わせた。

エストロジ市長は記者団に対し、管理人と年配の女性はその場で死亡し、もう1人の女性も近くのカフェに逃れた後、息を引き取ったと明らかにした。また犯人は警官によって狙撃され、身柄を拘束された後、病院に搬送されたが、生存しているとした。男は拘束後も「アラー・アクバル」と叫び続けていたという。

約2週間前にはパリ郊外の中学校の歴史教師がイスラム過激派とみられる18歳の容疑者に首を切られ殺害される事件が発生したばかり。教師がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を授業で生徒に見せたことが引き金になったとみられる。

対テロ検察官のジャンフランソワ・リカール氏はニースの事件に関し、容疑者はチュニジア国籍の1999年生まれの男性で、アフリカからの移民の「玄関口」であるイタリア南部ランペドゥーザ島から9月20日に欧州に入ったという。

チュニジア治安当局とフランス警察の両方の関係筋は、容疑者の名前をブラヒム・アウイサウイ(Brahim Aouissaoui)とした。

リカール氏は会見で、容疑者は29日朝に列車でニースに入り、教会に向かったと説明。現在、病院で治療を受けているが重体だとした。

チュニジアの攻撃・暴力に特化した裁判所の広報担当者はロイターに、アウイサウイ容疑者は9月14日にボートで出国したと述べ、チュニジア当局が科学的な捜査を開始したと明らかにした。

ニースのエストロジ市長は、今回の教会襲撃は、パリ郊外の歴史教師斬首事件と類似していると指摘した。

29日はイスラム教の預言者ムハンマドの誕生日に当たり、同教の祝日だった。フランス当局が風刺画を描いたり掲載する権利を擁護していることに対し、イスラム教徒からの反発が強まっており、イスラム教徒が多数を占める国では反仏デモが起きている。

トランプ米大統領はニースでの襲撃事件を受け、ツイッターに「イスラム過激派のテロ攻撃を直ちに停止する必要がある。フランスやその他のどの国も長くは我慢できない!」と投稿した。

英国やオランダ、イタリアなどと並んでトルコもニースの襲撃事件を非難。トルコのエルドアン大統領は今週、国民に対しフランス製品をボイコットするよう呼び掛けると同時に、欧州連合(EU)首脳に対しマクロン大統領の「反イスラム」政策を止めさせるよう訴えていた。

トルコの大統領広報部長はイスラム教をテロの文脈で使うべきではないと強調し、「フランス首脳にはイスラム教徒に対するさらなる扇動的な発言を回避し、その代わり、今回も含めた暴力行為の犯人を見つけることに集中するよう呼び掛ける」とした。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中