ニュース速報

ワールド

トランプ氏、香港への優遇措置廃止へ大統領令に署名 対中制裁法も

2020年07月15日(水)12時49分

 トランプ米大統領(写真)は7月14日、中国が香港への統制を強める「国家安全維持法(国安法)」を巡り、中国の「抑圧的な行動」への対抗措置として、米国が香港に対し認めてきた優遇措置を廃止する大統領令に署名した。(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米大統領は14日、中国が香港への統制を強める「国家安全維持法(国安法)」を巡り、中国の「抑圧的な行動」への対抗措置として、米国が香港に対し認めてきた優遇措置を廃止する大統領令に署名した。

香港の自治を侵害した中国の当局者やその加担者のほか、そうした当局者らと取引のある銀行に制裁を科すことを求める法案にも署名した。この法案は今月議会で可決され、14日が大統領の署名期限となっていた。

トランプ氏は会見で「香港の人々に対する攻撃的な行動に対し中国に責任を取らせるための法案と大統領令に署名した」と表明。香港が長年受けてきた優遇措置を終わらせるとし、「特権がなくなり、経済的な特別措置や機密技術の輸出もなくなる。香港は中国本土と同じ扱いになる」と述べた。

ホワイトハウスが公表した文書によると、大統領令は「香港の民主的機関や民主化プロセスを弱体化させる政策や措置」に責任があるとみなされた人物や加担者の資産を凍結する。

また米政府当局者に「香港への輸出に関するライセンスの例外措置を取り消す」よう命じたほか、香港のパスポート保持者を対象にした特別措置を廃止する内容が盛り込まれている。

トランプ氏は5月、香港に認めてきた優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると表明。即時停止には踏み切らなかったが、犯罪人引き渡しから軍民両用技術の輸出規制まであらゆる措置が対象になるとしていた。

ある米当局者は匿名を条件に、香港の自治侵害に関与した中国の当局者や組織に対し、米国への渡航禁止の拡大や米財務省の制裁を含む措置を政権が準備していると語った。

ただ時期などは不透明だ。ホワイトハウスはこれまでにもそうした制裁の可能性を示唆してきたが、これまでのところ名前や人数を特定せずにビザ(査証)を制限するにとどまっている。

米中間では、新型コロナウイルスの感染拡大や南シナ海での中国の軍事力強化、新疆ウイグル自治区での人権侵害、貿易不均衡などを巡り緊張が高まっている。

トランプ氏は新型コロナを巡り「われわれは、ウイルスを隠蔽し世界に広げた責任が完全に中国にあると考えている。中国は感染拡大を食い止めることができたはずで、そうすべきだった。発生時に発生地で対応していれば容易だっただろう」と述べ、中国の対応が不十分だったと非難した。

中国の習近平国家主席と協議する予定があるかとの質問に対しては「彼と話す計画はない」と答えた。

<諸刃の剣か>

香港から経済上の特別な地位を奪うことは米国にとって「諸刃の剣」となる恐れがある。

米国勢調査局のデータによると、昨年の米貿易黒字は地域別では対香港が261憶ドルで最大だった。

米国は香港の進んだビジネス環境から恩恵を受けており、優遇措置を完全に廃止するのは米国にとって自滅行為になりかねないとの指摘がアナリストから聞かれる。

国務省によると、2018年時点で香港に8万5000人の米国人が在住し、ほぼ全ての主要金融機関を含む1300社以上の米企業が拠点を置いている。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中