ニュース速報

ワールド

焦点:コロナ対策8週間と3兆ドル、米国はどんな成果を挙げたのか

2020年05月23日(土)07時49分

グローバル化時代に起き得る最も深刻な感染症大流行との闘いが2カ月を過ぎ、米国は病気との闘いも、経済面での闘いも勝利を挙げていない。多くの専門家は、米国はせいぜい最悪の結果を押しとどめているだけではないかと懸念している。写真は3月18日、ニューヨークのタイムズスクエアで撮影(2020年 ロイター/Jeenah Moon)

Howard Schneider

[ワシントン 18日 ロイター] - 失業保険手当の支給金が全米に流れ込み、中小企業向けには4900億ドルが補てんされ、米連邦準備理事会(FRB)は約2兆5000億ドルをつぎ込んで米国と世界の金融市場を支えている。医療崩壊や新型コロナウイルス感染症の米国死者が数百万人に上る懸念は、消えてはいないが、低くなってきた。

しかし、グローバル化時代に起き得る最も深刻な感染症大流行との闘いが2カ月を過ぎ、米国は病気との闘いも、経済面での闘いも勝利を挙げていない。多くの専門家は、米国はせいぜい最悪の結果を押しとどめているだけではないかと懸念している。

ある地域で感染者数が減っていると思いきや、別のホットスポット(感染集中地)が生まれて状況が悪化する。ウィスコンシン州ではバーが営業を再開し、店はごった返しているが、メリーランド州のように厳しい制限を続けているところもある。

公衆衛生の実態を全国的に明らかにできる普遍的で共通のウイルス検査計画もない。米国では毎日、依然1000ー2000人が新型コロナで亡くなり、2万─2万5000人の感染が確認されている。

何かしらコンセンサスがあるとすれば、社会と経済の常態に戻るための苦闘には、当初の想定よりもっと多くの時間と労力とお金がかかるということだ。不況が何年も続くリスクも高まっている。科学的事実を根拠に動く当局者は、日増しに見通しが慎重になっている。そして、今後数週間で行われる一連の選択は、将来にとって極めて重要な意味を持つ。

「集団免疫」獲得に避けて通れないとして大量の死者発生を無神経に受け入れるか、あるいはウイルス根絶に必要な究極の厳格な封鎖措置を取るか──。

ハーバード大のエコノミスト、ジェームズ・ストック氏が先週語ったところによると、米国民はこの2つの岐路に直面し「どちらの道にも進んでいない」。つまり経済的、公衆衛生的な痛みのトレードオフを巡り、明確な結論が全く見えていないのだ。

同氏は「われわれが、ただ、右往左往しているだけだということが本当に心配だ」と指摘。幅広く経済活動が再開されるだろうが、それは決して賢いやり方によってではないとし、何カ月間も15%や20%の失業率が続くと予想。「それがどれだけの打撃になるのか予測するのは難しい」と指摘する。

<経済対策の点検>

ムニューシン財務長官とパウエルFRB議長は19日、米上院銀行委員会の公聴会にネットを通じて出席し、コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)の実施状況について、最初の四半期報告を明らかにする。2人はここ数カ月の取り組みについて詳細な質問を受けることになるだろう。

このうち特に中小企業向け給与保護プログラム(PPP)では、当初、申請が殺到して処理がパンクし、上場企業にも多額の融資を与えてしまったと批判されている。

約1200億ドル分のプログラムがまだ手つかずで残っており、TDセキュリティーズのアナリストによると、これは申請の条件に混乱があるため、人々が申請をしないでいることを示唆する。

公聴会では、民主党議員が2人に対し、もっとやるべきことがあると認めさせる場になる可能性も高い。しかし、共和党議員はすぐに新たな策を取ることに反対している。

<死者予測は減少、ウイルス検査数は増加>

ロックダウンと資金注入は、感染拡大に対し一定の影響を与えた。スポーツイベントや大規模な集まりは延期され、レストランや商店は休業。このおかげで最大200万人とも予測された米国民のコロナ死者数は抑制された。

5月16日時点で死者は約8万7000人だ。8月初旬までに13万5000人を超えるというのが現在の予想だ。

ウイルス検査数は、連邦政府のミスや遅延を経て、現在は全米で1日当たり150万─200万件に増加している。ただ、公衆衛生専門家が米国に必要と主張する数の半分にまだ満たない。

厳格なロックダウンは、最もコロナの打撃がひどい地域で感染率を鈍化させた。感染増のカーブが横ばいになった。つまり医療崩壊の可能性は、低減できたことになる。

しかし、米国の12州以上は新型コロナとの闘いが、まだ初期段階にあるかもしれない。感染者数の増加が続いているからだ。

さらにいくつもの地元当局が、何週間もの外出制限の後、家庭内暴力や自殺の動きが増えていると指摘している。

<数兆ドルの追加対策は実現するか>

3月下旬に成立したCARES法は大規模と見なされ、人々の健康と経済のトレードオフを巡るジレンマを米経済が切り抜けるために、十分な規模だと考えられていた。世界大恐慌の1930年代以来と見られた経済の落ち込みに直面し、同法の主な目的は、個人に対しては失った所得を給付で補てんし、中小企業には融資をすることだった。

JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェロリ氏の最近の推計によると、4─6月の米国民の所得は年率換算で60%近くなるともみられていたが、CARES法の現金給付と融資により、15%減にとどまる可能性がある。急激な落ち込みではあるが、やり繰りはずいぶん可能になる。

しかし、第2・四半期の米国内総生産(GDP)は、年率で40%もの縮小になるだろう。今年度の連邦財政赤字は3兆7000億ドルと、4倍に膨れる見通しだ。

CARES法の一部は期限が近づいている。中小企業向け融資は給与支払いの8週間分を補てんすることになっている。トランプ大統領が国家非常事態宣言を出した3月半ばに休業に入った企業にとっては、既に失効していることになる。週間失業保険給付金の600ドルへの臨時増額措置も7月末に終わる。

米下院は今月15日、資金不足を一部埋めるためCARES法に基づく追加の3兆ドルの経済対策を可決した。だが、共和党が主導する上院を通過するかどうかは分からない。

米景気は3月時点では「V字型」で回復すると予想されていたが、それから何週間もたった今、大半のエコノミストや公衆衛生当局者の見通しはもっと暗くなっている。

エコノミストでプリンストン大教授のアンガス・ディートン氏は「感染地域が全米で違う場所に移動するために、1日当たりのコロナ死者数はわずかに上下するだけで、多大な死者が出続ける状態がいつまでも続く可能性は高い」と指摘。米国民が耐える準備をしているソーシャルディスタンス(社会的距離)のたぐいの措置では、それほどうまくいかない」と話した。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、物価高対策アピール ジョージア州で演説

ビジネス

マクロスコープ:「国益スタートアップ」に脚光 Sa

ワールド

FRBの政策は適切な状態=米SF連銀総裁

ワールド

米無担保個人ローン、昨年記録更新 サブプライム層け
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 5
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 6
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 7
    カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 10
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中