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アングル:サンダース氏がネバダで圧勝、民主指名争いに変化も

2020年02月23日(日)21時23分

米民主党のネバダ州党員集会でサンダース米上院議員が手にした大きな勝利は、同氏の選挙活動が一段と勢いを増し、これまで同氏を敬遠していた層にまで支持が広がっている状況を示した。写真は勝利演説するサンダース氏、22日テキサス州で撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

James Oliphant

[ワシントン 23日 ロイター] - 米民主党のネバダ州党員集会でサンダース米上院議員が手にした大きな勝利は、同氏の選挙活動が一段と勢いを増し、これまで同氏を敬遠していた層にまで支持が広がっている状況を示した。11月の米大統領選挙に向け、同氏が民主党候補としての指名を獲得する道筋が、少なくとも現時点では、より明確になったと言える。

自他ともに認める民主社会主義者であるサンダース氏の圧勝を目の当たりにした他の候補は、同氏の勢いをどうそぐのか、それぞれの力を競い合うことになる。1週間後の29日にはサウスカロライナ州での予備選があり、その先には指名争いの先行きを決定付ける3月3日のスーパーチューズデーが控えている。

今後、民主党の各候補はどのような選挙戦を展開するのか。各候補の状況と課題を分析する。

<サンダース氏:年齢や性別、人種超え支持層が拡大>

サンダース氏はこれまでもネバダ州で優勢に立つとみられてきたが、その期待以上に、同氏を支持する人々の結束は広がっている。

調査会社のエディソン・リサーチが行ったネバダ党員集会での調査によると、サンダース氏はラテン系の支持で他の候補者を圧倒し、黒人党員についてはバイデン氏に次ぐ支持を得た。65歳以下でもトップの候補者であり、男女を問わず、カレッジ卒業者や学位のない人々からも最大の支持を受けた。

政党から独立していると考える選挙民にとってサンダース氏はもっとも選択しやすい候補者だった。そして、おそらく同氏の選挙戦にとって最も重要なことだが、11月の大統領選でトランプ氏撃破を最大目的にしている人々は、サンダース氏をバイデン氏よりも好ましい候補者と考えている。

サンダース氏にはすべてが良いニュースとなっている。もしサウスカロライナでサプライズとなる勝利をもぎ取ることができれば、同氏は波に乗ったままスーパーチューズデーを迎えることになるだろう。

<バイデン氏:サウスカロライナが勝敗の分かれ目に>

バイデン前副大統領にとって、ラスベガスの夜の党員集会は勢力回復のカンフル剤となった。開票の早い段階で同氏がサンダース氏に続いて2位につけたことがわかると、「thecomeback kid (失敗からよみがえった者)」という声が人々から上がった。

ほんの少し前まで、ネバダでの投票ではバイデン氏が最も優位に立つとみられていた。実際にはサンダース氏に及ばなかったものの、アイオワとニューハンプシャーの結果が期待とはかけ離れていただけに、同氏にとってネバダでの健闘は選挙戦の立ち直りを宣言するに値する成果だった。特に黒人層からは36%の支持を確保し、サンダース氏の27%とは明確な差がついた。

いま、大統領候補としての指名に向け、バイデン氏はおそらくもっとも重大な1週間に直面している。アフリカ系が多いサウスカロライナで勝つことができなければ、同氏にとって、他の候補者と同様、最終的にサンダース氏の指名を阻止できない可能性がさらに高まるだろう。

<ブティジェッジ氏:支持層広がらなければ失速も>

前インディアナ州サウスベンド市長のブティジェッジ氏は今回もサプライズをもたらした。ネバダ党員集会で示した3位という強さは、今後も同氏が指名争いにとどまることを意味する。しかし、候補者としての主張がさらに広い層に響かなければ、指名獲得への勢いは限られるかもしれない。

同氏は白人で高学歴の穏健層からは引き続き強い支持を受けている。ただし、非白人層ではまだまだ水面下だ。調査によるとラテン系の支持は9%、黒人層に至ってはわずか2%にとどまっている。

これは黒人層などが多いサウスカロライナでの投票を占ううえで、厳しい結果だ。さらにカリフォルニアやテキサスなどのスーパーチューズデー各州では、同氏が苦しい戦いを強いられる可能性もある。

<ウォーレン氏:中核支持層に陰り、スーパーチューズデーに照準> 

ネバダ党員集会前の19日に行った討論会でウォーレン上院議員が展開した力強い議論は、停滞気味のキャンペーンが勢いよく再開されたことを示しているかのようだった。資金調達も回復し改めてメディアの関心を集めた。

しかし、こうした勢いはネバダの投票結果には反映しなかった。事前投票により討論会の内容が票に結びつかなかった。

同氏はネバダでは第4位に甘んじるもようだ。後退を余儀なくされた背景には、中核支持層の一部である高学歴の白人女性層の支持が18%と思わしくなく、サンダース氏の22%、クロブシャー上院議員の19%よりも低い結果だった。

ウォーレン氏はサウスカロライナではなくスーパーチューズデーに照準を当てているようだ。資金の増加で全国規模の広告展開をする余力が増している。ネバダの結果は不本意だったとしても、ウォーレン氏は選挙戦に残る数少ない候補者であり続けるだろうと同氏の陣営は主張する。「ネバダでの討論会は、ネバダの投票よりも選挙戦全体により大きなインパクトを与えると信じている」と同氏の選挙参謀は指摘した。

<クロブシャー氏:非白人層への食い込み不足、撤退観測も>

ニューハンプシャーで3位となるサプライズを起こしながら、クロブシャー上院議員はネバダではほとんど何の存在感を示せなかった。19日の討論会では苦戦し、メキシコ大統領の名前を思い出せずに失笑を買う場面もあった。

ブティジェッジ氏と同様、クロブシャー氏は非白人層にほどんどまったく食い込みができていない。ネバダでのラテン系の支持は4%、黒人層は3%だった。

おそらくサウスカロライナでも何の痕跡も残せずに終わるだろう。スーパーチューズデーで自身の出身州であるミネソタで勝利し、先に進むという可能性に望みをつないでいるものの、その前に選挙戦撤退を強いられる候補者となるかもしれない。

<ブルームバーグ氏:好感度は低下、資金力で攻勢へ>

ネバダでの投票には登場していなかったものの、同氏の候補者としての評価は、その前に行われたラスベガスでの討論会でのパフォーマンスですでに傷ついたかもしれない。投票前の21日に行われたモーニング・コンサルトの調査によると、同氏に対する民主党員の支持は3%ポイント下落、全体的な好感度も大きく低下している。

ブルームバーグ氏にとって最良のニュースがあるとすれば、それはサンダース氏がネバダの投票で圧倒的な首位に立ったことかもしれない。穏健派はサンダース氏に照準を定め、同氏追い落としにやっきとなるだろう。一方、富豪であるブルームバーグ氏はすでに自らの個人資産から4億ドル以上の資金を選挙戦につぎ込んでいるが、自身にとって最初の選挙となるスーパーチューズデーに向け、さらに多額の資金を投じ、選挙戦へのインパクトを与えようとしている。

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