ニュース速報

ワールド

ウクライナ機事故、イラン軍が誤射か ミサイルで撃墜の可能性

2020年01月10日(金)03時18分

 ウクライナ国際航空機がテヘランの空港を離陸した直後に墜落した事故を巡り、イランの民間航空当局は初期調査報告書で、機体は墜落直前に炎上していたと指摘した。写真は8日、事故現場で撮影。提供写真(2020年 ロイター/Nazanin Tabatabaee/WANA (West Asia News Agency)

[ドバイ/キエフ/ワシントン 9日 ロイター] - ウクライナ政府は9日、同国の旅客機(ボーイング737─800)が8日イランの首都テヘランの空港を離陸した直後に墜落し乗員乗客176人全員が死亡した事故の原因を巡り、ミサイルによる撃墜を含む4つの可能性について調査を進める考えを明らかにした。

また米当局者は、イラン空軍が誤って撃墜した公算が大きいとの考えを示した。

ウクライナは、現場で見つかったとされるイラン軍が使用するロシア製ミサイルの破片の写真がインターネット上で取り沙汰されていることに言及し、ウクライナの調査団がミサイル撃墜の可能性を巡り現場を調査したい考えを示した。さらにミサイル撃墜のほか、衝突、エンジンの爆発、テロの計4つの可能性について調査するとした。

ある米当局者は墜落事故が発生する直前にミサイル2発が発射された兆候を米国の衛星が捉えていたことを明らかにした。別の当局者2人によると、米政権は旅客機が誤って撃墜されたと認識しているという。

トランプ米大統領は記者団に対し「誰かが誤りを犯した可能性がある」と述べたが、具体的な詳細には踏み込まなかった。

イランの民間航空当局はこの日、初期調査報告書を公表し、機体が墜落直前に炎上していたと指摘。高高度で飛行していた別の航空機や地上からの目撃情報として、事故機は飛行中にすでに燃えていたとしている。また、同機は離陸後間もなく技術的な問題が生じ、近隣の空港に向かい始めた後に墜落したとの見方を示した。

報告書では技術的な問題の詳細に踏み込んでいないが、カナダの安全保障当局関係者はロイターに対し、エンジンの1つに過熱の痕跡が見られたと述べている。

墜落事故の調査は複雑で、全容把握には通常数カ月の時間を要することから、事故発生から24時間以内に初期報告者が公表されるのは極めてまれ。

ウクライナのゼレンスキー大統領はテレビでの声明で、事故を巡り情報操作や憶測、陰謀説、性急な判断などを控えるよう求めた。

ウクライナ大統領府によると、イランのロウハニ大統領はゼレンスキー大統領に対し、ウクライナの調査団が必要とするデータへの完全なアクセスを提供することを確約した。

イランのウクライナ大使館は8日、事故原因としてエンジンの故障にいったん言及したが、その後の声明で、原因はまだ明らかにされていないと修正。当初のコメントは公式のものではないと説明していた。

カナダのシャンパーニュ外相は声明で、同国が犠牲者の身元確認作業や事故原因の調査に参加できるようイランに求めた。今回の事故ではカナダ人も犠牲者に含まれている。

英国のジョンソン首相はゼレンスキー大統領との電話会談後、透明性のある調査を進めるようイランに要請した。

イラン民間航空機構(CAO)のアベドザデ総裁はウクライナ機の墜落事故がミサイルによって引き起こされたとの見方について「非論理的」だと反論した。国営イラン学生通信(ISNA)が伝えた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヨルダンと西岸の境界検問所で銃撃、イスラエル軍兵士

ワールド

米、EUへの輸入依存加速 中国上回る=民間調査

ビジネス

再送(18日配信記事)-パナソニック、アノードフリ

ワールド

米・イスラエル、ガザ巡る国連職員の中立性に疑義 幹
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中