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アングル:アマゾン森林破壊、レアル下落と低金利で拍車

2019年12月15日(日)09時41分

12月9日、過去最低水準となったブラジルの政策金利やレアル下落が続く外為相場が、アマゾンの森林破壊を加速させている。写真はブラジル・ポルトヴェーリョ近くで、熱帯雨林から運び出される木材。9月撮影(2019年 ロイター/Bruno Kelly)

Gabriel Sargardter

[リオデジャネイロ 9日 ロイター] - 過去最低水準となったブラジルの政策金利やレアル下落が続く外為相場が、アマゾンの森林破壊を加速させている。複数のエコノミストは、ただでさえ農場経営者寄りの姿勢を採るジャイル・ボルソナロ大統領の政策によって進んだ森林破壊に、拍車がかかっていると指摘する。

ボルソナロ政権が環境保護基準を後退させ、中国によるブラジル農産物の輸入量が過去最大となる中で、農場経営の最前線をアマゾンのさらに奥まで推し進める新たな経済要因として、通貨安と低金利が存在していると専門家は指摘している。

つまり、土地購入、設備投資、作付け、家畜の飼養、そして専門家が懸念を表明するアマゾン川流域の熱帯雨林伐採に向けて、経済的なインセンティブは豊富にある、というわけだ。だが、その熱帯雨林は気候変動に対する大きな緩衝装置の1つなのである。

「まるで史上最悪の大嵐のように、アマゾンでは、こうした制約なき競争が生まれている」と語るのは、コロラド州立大学で森林破壊を研究するエコノミスト、エドワード・バービア氏。「可能性としてではあるが、(森林破壊が)制御不能のスパイラル状態に陥っているのではないかと思う」と強い懸念を示した。

森林破壊の主な要因が、2012年頃に始まった環境規制緩和であるという点で、専門家らの見解は一致している。ボルソナロ政権下でもこの流れは続いており、同大統領は熱帯雨林保護を所管する機関の活動を制約している。

専門家らが証拠として挙げるのは、2004─2012年の時期には、コモディティ価格が高かったにもかかわらず、ブラジルにおける森林破壊が80%も削減された点だ。

昨今のブラジルにおける農業ビジネスブームは、ボルソナロ大統領の当選と同じタイミングで生じている。陸軍大尉出身の極右主義者であるボルソナロ氏は、環境破壊に対する罰金を激しく非難し、熱帯雨林に新たな幹線道路を通すことを公約している。

貿易相手国トップの中国は、米政府との貿易紛争や豚コレラによる打撃を受け、ブラジル産の食肉・穀物を大量に輸入する一方で、欧州の消費者が抱くような環境への関心をほとんど見せていない。

さらにブラジル中央銀行が11日に政策金利を史上最低の水準に引き下げると予想される中で、通貨レアルもここ数週間、過去に類を見ない水準まで下落している。

ボン大学のエコノミスト、ヤン・ベルナー氏は「為替レート、金利、そして中国発であれEU発であれグローバル需要と、違法な森林破壊との間に『正の相関』があることを示す科学的研究はいくつもある」と語る。

2018年8月から2019年7月にかけた最新のデータによれば、この期間に伐採された熱帯雨林の面積は過去11年間で最も大きかった。暫定的な数値では、このペースはその後さらに加速している模様だ。

<幸運相次ぐ農業ビジネス>

ブラジルの農業ビジネスはこの数十年間、飛躍的に成長してきた。ブラジルが自国の熱帯性気候に合わせて、工業化された農業技術を適応させてきたからだ。過去8年間のうち6年は、農業セクターの成長がブラジル経済全体の成長を上回っている。

今回、農業セクターの幸運な連鎖が始まったのは2018年初頭である。結果の予測が難しかった選挙のせいでレアルが下落し、輸出条件が有利になった。それ以来、レアルの対ドル相場が約25%も下落するなかで、農業セクターは動揺するブラジル経済を支える重要な役割を果たしている。

前週にされた第3四半期の経済データによれば、農業ビジネスは経済全体の2倍以上のペースに当たる1.3%の成長を示している。

2018年にはもう1つ、農場経営者にとって幸運な変化があった。トランプ米大統領との貿易紛争に対応して、中国政府が米国産大豆に報復関税を課したのである。中国の輸入企業は、国内の大規模養豚産業の需要を満たすため、より低コストのブラジル産大豆に飛びついた。

こうした旺盛な需要を背景に、ブラジルの農場経営者は、国際商社が課したアマゾン熱帯雨林のうち2008年以降に破壊された地域で生産された大豆の購入を禁じる措置の終了を要求している。

一方、アフリカ豚コレラが中国で発生したことで、大豆ブームがどれだけ続くか疑問も生じている。だが、中国政府が鶏肉・牛肉・豚肉の供給を強化している中で、これはブラジルの食肉輸出にとって追い風となっている。

農業ロビー団体CNAは前週、金額ベースで見たブラジルの牛肉生産が来年には22%成長すると発表。国内の農業生産全体でも、2020年には今年の3倍のペースに当たる3%の成長を示すだろうと述べた。

レアル安により輸入原材料の価格は上昇するだろうが、土地や設備の購入に向けた民間セクターの資金調達コストは、かつてないほど低くなっている。ブラジル中央銀行は、2016年には14.25%だった基準金利を5%まで引き下げており、政府保証による農家向けローンを市中銀行が肩代わりしようとしている。

リオデジャネイロ教皇庁立大学のエコノミスト、ジュリアーノ・アスンサオ氏によれば、これは不吉な兆候だという。

「こうした市場の動きが、実際にアマゾンの森林破壊に影響を与えている」と同氏は分析している。

(翻訳:エァクレーレン)

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