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焦点:年内利下げ観測が支える米株高、一部投資家は妥当性疑問視

2023年05月11日(木)18時46分

 米経済の過熱感はFRBによる年内の利下げを正当化できるほど急速に解消されないのではないか──。米株式投資家の一部でこうした懸念が広がりつつある。写真はニューヨーク証券取引所で10日撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米経済の過熱感は連邦準備理事会(FRB)による年内の利下げを正当化できるほど急速に解消されないのではないか──。米株式投資家の一部でこうした懸念が広がりつつある。

S&P総合500種が年初来で7%、昨年10月の直近安値から15%上昇する原動力の1つになったのは、FRBが年後半に利下げするとの期待感だ。しかしFRB自体は、年末まで政策金利をほぼ現在の水準に維持する方針を示している。

こうした中で何人かの投資家からは、10日発表された4月消費者物価指数(CPI)や5日発表の4月雇用統計など最近のデータを見る限り利下げに追い風が吹いている証拠は乏しく、株価を押し上げてきた根拠が揺らぎかねないとの声が聞かれた。

チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「S&P総合500種のバリュエーションは、恐らくは今から年末までの間に金利がやや低下するとの希望に基づいて幾分高くなっている。これらの希望は現実化しないかもしれず、株式市場にある程度下げ余地が出てくることをうかがわせている」と指摘した。

4月CPIの前年比上昇率は4.9%で、エコノミスト予想をやや下回った。10日の金利先物市場では、足元で5-5.25%の政策金利が12月には4.33%まで切り下がるとの予想が反映され、依然として利下げが見込まれている形だ。もっともCPIの伸びはFRBが目標とする2%よりは大幅に高く、経済が突然減速するか新たなショックに見舞われない限り、FRBの年内利下げシナリオは雲行きが怪しくなるかもしれない。

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのマルチ・アセット・ソリューションズでポートフォリオマネジャー運用共同責任者を務めるアレクサンドラ・ウィルソン・エリソンド氏は「FRBは市場の織り込みよりも長い期間、政策金利を動かさないと考えている。中央銀行の対応はこれまで市場の想定以上にタカ派的だったし、これからもそうである公算が大きい」と述べた。

FRBがタカ派姿勢を続けた場合、株価にとって問題となりかねない。リフィニティブ・データストリームに基づくと、S&P総合500種の株価収益率(PER)は18倍と、過去平均の15.6倍を大きく上回っているからだ。

そしてFRBの利上げが最終的に大方の予想通り、今年中に景気後退(リセッション)をもたらすとすれば、現在のバリュエーションは企業利益を過度に楽観視している形になる。

リフィニティブIBESデータで見た今年のS&P総合500種企業の増益率は1.5%増だが、ネッド・デービス・リサーチによると、リセッション下で企業利益は平均で年間24%減少する。

株式市場には、米議会で債務上限引き上げに向けた動きが進展せず、デフォルト(債務不履行)が心配されるという別のリスクも影を落としている。

ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「市場はFRBが利下げ方向に政策転換してくれるという見通しをプラスにとらえている。われわれからすれば、リスク資産は今後進展してくる可能性がある別の問題は織り込んでいない」と警告した。

ミスキン氏は、債券に対して株式はある程度アンダーウエートにしているほか、株式の中ではハイテクなど質の高いセクターやヘルスケアなどのディフェンシブ銘柄を好ましい投資対象とみなしている。

それでも多くの投資家は4月CPIに意を強くしたようだ。

LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏はCPIを踏まえて、FRBが6月に利上げを停止するのは「ほぼ確実」で、物価と実体経済が今後さらに減速していくとともにFRBは利下げの正当化が可能になると主張。「投資家がこの最新の物価統計を消化すれば、リスク資産はもっと魅力が増すだろう」と付け加えた。

(Lewis Krauskopf記者)

ロイター
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