ニュース速報

ビジネス

米FRBが0.25%利上げ、近く停止も示唆 金融不安の影響注視

2023年03月23日(木)12時38分

米連邦準備理事会(FRB)は3月21─22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ4.75─5.00%とした。決定は全会一致。ただ、米銀2行の経営破綻を受け金融市場が混乱する中、利上げが近くいったん停止される可能性があることを示唆した。 (2023年 ロイター/Leah Millis)

[ワシントン 22日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は21─22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ4.75─5.00%とした。決定は全会一致。ただ、米銀2行の経営破綻を受け金融市場が混乱する中、利上げが近く一時停止される可能性があることを示唆した。

FRBが公表した最新の金利・経済見通しによると、政策当局者はインフレを抑制するために今年あと1回の利上げが必要と想定。2023年末の政策金利の予想中央値は5.1%と昨年12月時から変わらなかった。

ただ、シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクの突然の破綻を受け、FRBはFOMC声明から「継続的な」利上げが適切との文言を削除。FRBはこの文言を今回の利上げサイクルを開始した22年3月16日から声明に含めていた。

代わりに「幾分の追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれない」との文言を採用。あと1回の0.25%ポイントの利上げ後は、利上げがいったん停止される可能性があることが示唆された。

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、金融システム不安に言及。「この問題がどれだけ深刻で持続的かを検証する」と説明。「マクロ経済に重大な影響を及ぼす可能性は十分にあり、それを政策に踏まえることになる」と述べた。

「金融環境は引き締まったようで、従来型の指数が示すよりおそらく引き締まっている。指数は融資状況を必ずしも捉えていないからだ」と述べた。引き締まりの程度に注目しているとした。

一方で、米金融システムの安定性について繰り返し自信を表明した。「過去1週間で預金の流れは安定化した」とし、SVBの破綻は経営が「ひどく失敗」していたことが原因で、銀行部門の全般的な脆弱性を示すものではないと強調した。

FRBには「安全で健全な銀行システムを維持するために、必要に応じてあらゆる手段を用いる用意がある」と述べた。インフレ率を2%に引き下げることに引き続き強くコミットするとも語った。

<年内の利下げ見込まず>

米国債利回りはFOMCの結果を受けて低下。金利見通しを敏感に反映しやすい2年債利回りは一時21ベーシスポイント(bp)余り低下した。

米株はFOMCの結果発表直後に急上昇したものの、その後は下落に転じて大幅安で終了した。

金融市場はFRBが今回の利上げを最後に一時停止し、今夏までに利下げを開始するシナリオを織り込んでいる。

ただ、パウエル氏は年内の利下げについて「基本シナリオの想定ではない」と言明。「重要なことはインフレ率を2%に引き下げるのに十分な引き締め政策を取ることだ」と強調し、引き締めは利上げだけでなく、金融環境の引き締まりによってももたらされる可能性があるとした。

<物価・経済見通し>

FOMC声明は物価情勢について「インフレ率は引き続き高止まりしている」と指摘。前回の声明では「インフレ率は幾分和らいだが、引き続き高止まりしている」としていた。

労働市場については「雇用の伸びはここ数カ月間で上向き、堅調なペースで進んでいる」とした。

最新の金利・経済見通しによると、個人消費支出(PCE)価格指数の伸びが23年第4・四半期に3.3%に鈍化すると予想。FRBの2%目標への進展は12月時の見通しより鈍化すると見込んだ。

現在3.6%の失業率は23年第4・四半期に4.5%、24年に4.6%に上昇すると想定。12月時は今年4.6%への上昇が見込まれていた。

23年の経済成長率の見通し中央値は0.4%。12月時は0.5%だった。24年については1.6%から1.2%に引き下げられた。

*動画を付けて再送します。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中