ニュース速報

ビジネス

アングル:米株市場でハイテク株「復権」、バリュー株への乗り換え一服

2021年04月19日(月)08時59分

 4月16日、米株式市場ではここ数週間、代表的な成長株であるハイテク株の「復権」が鮮明で、いわゆるバリュー株への乗り換えが一服している。背景にあるのは長期金利が低下に転じたことや、四半期決算をにらんだ警戒感などだ。ニューヨーク証取で2020年3月撮影(2021年 ロイター/Lucas Jackson)

[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米株式市場ではここ数週間、代表的な成長株であるハイテク株の「復権」が鮮明で、いわゆるバリュー株への乗り換えが一服している。背景にあるのは長期金利が低下に転じたことや、四半期決算をにらんだ警戒感などだ。

S&P総合500種の情報技術セクターは4月の上昇率が8%と、総合500種全体の5%を上回った。同セクター以外に属するハイテク関連銘柄のアマゾン・ドット・コムやテスラ、グーグル親会社アルファベットなども軒並みアウトパフォームしている。

昨年終盤に新型コロナウイルスワクチンが登場して以来、数カ月にわたって株式市場を引っ張ってきたのは銀行、エネルギーといった景気動向に敏感なバリュー株で、ハイテク株の値動きは相対的に劣勢を強いられていた。

ところが4月に入って米国債価格が大幅反発(金利は大幅低下)するとともに、バリュー株の多くは上昇の勢いが弱まっている。これについて一部の投資家は、足元の経済データが示す経済の急成長は既に相場に織り込まれたのではないかと受け止めた。

入れ替わる形でハイテク株が再び市場の主役に躍り出た要因の1つは、やはり米国債の動きだ。4月初め以降、10年債利回りは約15ベーシスポイント(bp)下がって16日時点で1.6%前後になった。

ハイテク株をはじめ、バリュエーションと将来の収益への期待が高い銘柄は特に利回り上昇が逆風になる。多くの標準的な投資モデルで利回り上昇はこれらの株価を押し下げてしまうからだ。第1・四半期の10年債利回り上昇幅はおよそ83bpだった。

パットナム・インベストメンツのシニア市場ストラテジスト、クリス・ガリポー氏は「市場参加者は恐らく大いに安心感を持ち、『オーケー、金利が一本調子で(2.5%)に向かうことはなさそうだ』と話していることだろう」と述べた。

一方アライ・インベストのチーフ投資ストラテジスト、リンゼー・ベル氏は「ハイテク株と成長株が幾分上向き始めたのは、市場参加者がやや警戒姿勢を強めているからだ」と語り、少なくとも四半期決算シーズンを乗り切るまで投資家は様子見モードを維持すると予想した。19日の週には、ネットフリックスとインテルが主要ハイテク株の先陣を切る形で決算を発表する。

ハイテク株やその他の「巣ごもり」関連銘柄は、米国内のワクチン接種に何か重大な問題が起きたり、景気回復の妨げになるような要素が発生したりすれば、強含んでもおかしくないとの声も聞かれる。

例えば米食品医薬品局(FDA)がこのほど、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチン使用の中断を勧告すると、株式市場では経済活動再開がプラスに働く旅行関連セクターから巣ごもり関連セクターへの資金シフトが起きた。

ただ投資家の間では、最近のハイテク株の堅調は一時的で、いずれバリュー株と景気敏感株が市場を再びけん引するとの見方が多い。米連邦準備理事会(FRB)が今年は約40年ぶりの高成長になるとみており、そうした経済情勢の恩恵を最も受けるバリュー株を投資家が保有しようとするからだ。

ガリポー氏は、成長株の上昇が一服した後にまた反発し、そこで一休みしたバリュー株が次に上昇するという流れがこれから数年続いても驚かないと話した。

もっとも株式市場全般の先行きをより懸念する向きも出ている。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチは最近公表したリポートで、株式投資に慎重になるべき理由として割高感や過去1年間の突出したリターンなど5項目を列挙。年末のS&P総合500種の予想を3800と、現在より9%程度低い水準に設定した。

(Lewis Krauskopf記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中