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アングル:アジアのジャンク債、米国債の混乱で注目の避難先に

2021年03月09日(火)15時46分

米国など先進国の債券市場が軟調となる中、比較的高利回りで安定しているアジアのジャンク債が避難先として注目されている。写真はインド・ムンバイの店頭で2018年8月13日に撮影。(2021年 ロイター/Francis Mascarenhas)

[東京 9日 ロイター] - 米国など先進国の債券市場が軟調となる中、比較的高利回りで安定しているアジアのジャンク債が避難先として注目されている。

主要国で長期利回りが数年ぶりの高水準となっていることは2013年の「テーパー・タントラム(かんしゃく)」を連想させる。ただ、当時と異なり、アジアのインドやインドネシアなどでは債券・通貨の売りは見られていない。

今では力強い経済と浪費を抑えた政府、経常収支の改善を背景に、アジアは利回りを求める投資家の避難先に。今年に入ってから中国債に対する外国人投資家の買い越し額は415億ドルとなり、既に2020年通年の約3分の1となっている。その他アジア新興国の債券市場でも今年は28億ドルの資金流入。昨年通年の61%となっている。

BNPパリバ・アセット・マネジメント(ロンドン)の新興国市場債券担当責任者、JCサンボ―氏は「相対的バリュー面からアジア新興国市場は魅力的だ」と指摘。中国といった市場の債券の安さに言及し、「われわれはハイイールドに一段のバリューがあると考えている。ファンダメンタル的にミスプライス(不適正な価格付け)になっていると考えている」と述べた。

アジアのジャンク債のスプレッドはインフレ率を上回るリターンを求める投資家にとって大きな魅力となっている。

バンク・オブ・アメリカのハイイールド・アジア新興国市場指数は米国債に対するスプレッドが671ベーシスポイント(bp)。米国のハイイールド・クレジット指数ではこのスプレッドは330bpにとどまっている。

リスク回避姿勢が比較的強い投資家向きの中国国債、インドネシア国債、インド国債でも米国債に対するスプレッドは170─500bpとなっている。

<中国ではデフォルトリスクに要警戒>

BNPパリバのサンボ―氏は、さらなるリスク予防策として中国のドル建て社債を好んでいると説明。為替リスクを懸念するその他投資家もドル建て債券を好んでいるという。

リーガル&ジェネラル・インベストメント・マネジメント(ロンドン)のポートフォリオマネジャー、ジャスティン・オヌエクウシ氏は「ドイツなどの利回り水準を考えると、ボラティリティーに対する守りが狙いならば、いかなる規模であれそうしたところの債券を持つ意味がない。このため、韓国や中国の債券に対してわれわれの見方はポジティブだ」と語った。

アジアのハイイールドクレジット市場で中国の存在は大きいものの、企業のデフォルト(債務不履行)を巡るリスクはある。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(シンガポール)のアジア太平洋地域社債担当責任者、ポール・ルカスゼウスキ氏も、中国のドル建て債に対する姿勢はポジティブだとしつつ、発電や工業セクターには警戒している。炭素排出削減計画による負の影響が見込まれるためだという。

TDセキュリティーズ(シンガポール)のアジア・欧州新興国市場担当チーフストラテジスト、Mitul Kotecha氏は、取引が徐々に多くなる中で一部投資家が利食い売りを出せばアジア債券市場は資金流出局面を迎えるだろうとしつつ、長期のファンダメンタルズは堅固に見えると語った。

(Stanley White記者)

ロイター
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