ニュース速報

ビジネス

イエレン氏が50年債発行の検討に意欲、市場は抵抗感示す公算

2021年01月20日(水)08時17分

[19日 ロイター] - バイデン次期大統領が財務長官に指名したイエレン前連邦準備理事会(FRB)議長は19日の指名承認公聴会で超長期債である50年債の発行を検討する考えを示した。ただ、アナリストによると、市場参加者は抵抗感を示す可能性がある。

米上院財政委員会が開いた公聴会で、イエレン氏は50年債発行に関する質問に対し、発行の可能性や同年限の国債の潜在的な市場について検討することに前向きだと回答し、長期債発行にはメリットがあるとの認識を示した。

しかしアナリストは、米財務省が実際に超長期債の発行を検討した場合、これまでと同様、需要が十分にないという結論にたどり着くだろうと指摘。

ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略部長、スバドラ・ラジャパ氏は「50年債には自発的な買い手が存在しない。米国ではこれまで何回も検証されてきた」と述べた。

歴史的な低金利を受けて海外の政府は超長期債発行に踏み切っており、ムニューシン現財務長官も超長期債の発行を何度か検討した。

ただ、銀行や機関投資家で構成される米国債発行諮問委員会(TBAC)が超長期債発行を推奨したことはなく、2017年のプレゼンテーションで「米市場で超長期債に著しく強いまたは持続的な需要があるとの証拠は見当たらない」と結論づけた。

TBACを含む米証券業金融市場協会(SIFMA)からコメントは得られていない。

超長期債の発行で課題となるのは、需要を喚起するために政府がインフレ加速などのリスクを踏まえて大幅な上乗せ金利(プレミアム)を支払わなければならないということだ。

TD証券の金利アナリスト、ゲナディ・ゴールドバーグ氏は「理論上はこれだけの借り入れを確保するのは非常に良い考えだが、実際の需要や対価を考えるとそれほど良い考えではなくなる」と述べた。

米国以外の政府は長期債の発行を増やしているが、米国の事情は異なる。

例えば、欧州では保険会社や年金基金が資産と負債のマッチングを義務付けられており、超長期債の需要創出につながっている。しかしゴールドバーグ氏によると、米国では年金基金の多くは期間50年前後の負債はなく、資産についても高いリターンを求めて社債などの高リスクなものを志向する傾向にあるという。

米財務省は昨年、超長期債よりも20年債に需要があるとの市場の意見を踏まえ、1986年以来初めて20年債を発行している。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過去最高水準に
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中